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2022/02/27

第190回コラム「症例報告執筆時のCAREガイドラインのご紹介」

上塚 朋子, Pharm.D.

 先般CARE Guidelineの日本語版ツール作成のお手伝いをしたので、ご紹介したいと思います。ガイドラインとはいっても、日頃臨床業務で参考にしている診療・治療ガイドラインではなく、ヘルスリサーチの報告に関するガイドラインです。症例報告(Case report)のCAとREの文字を取って名付けたCARE Guidelineは、症例報告の正確性・透明性・有用性を向上させる目的で作られました1)。類似のガイドラインとしては、臨床試験の報告のためのCONSORT Guidelineやシステマティックレビュー・メタアナリシスのためのPRISMA Guidelineがあるので、これらをご存知の方もいらっしゃるかもしれません2)

 CARE Guidelineのツールとして用意されているものは、CARE Checklist, Writing OutlineとTimeline instruction & Examplesの3つで、最初の2つは日本語版が用意されています3)。タイムラインの書き方と実例は英語版のみです。Writing Outline(執筆アウトライン)は症例報告執筆時の各項目と注意点がまとめられています。CARE Checklist(チェックリスト)は書き終えた症例報告の原稿を振り返って、各項目が満たされているかどうかを確認するためのリストになっていて、13項目で構成されています。症例報告を医学ジャーナルに投稿する際には、CAREガイドラインに従い、チェックリストを提出することが推奨されています。

 皆さんは普段、どのような場面で症例報告の論文を読みますか?私が少し前に読んだ症例報告を例に挙げて考えてみます。医薬品・医療機器等安全性情報 No.387で報告されたアレルギー反応を伴う急性冠症候群(コーニス症候群)について調べた時に、症例報告4,5をいくつか読みました。セフォペラゾンナトリウム・スルバクタムナトリウムの使用上の注意にコーニス症候群に関する注意喚起の追記が指示されたため、副作用の具体例を知りたいと思い、参考文献を手掛かりに見つけました。

 CARE guidelineを掲載しているScientific Writing in Health & Medicineのウェブサイト3には、症例報告の役割が次のように書かれています。「症例報告は実臨床の現場でのeffectiveness(有効性)に関する情報を提供し、前向き臨床試験から得られるefficacy(効力)に関する情報を補完する。」 確かに、セフォペラゾンナトリウム・スルペラゾンナトリウムの前向き臨床試験からは、このコーニス症候群に関する情報は得られていないと推察されます。理由は、発生頻度の低さと、認知度が高くないためにおこる検出力の低さだと考えられます。しかし、症例報告ではこのような稀な副作用を医学ジャーナルに報告することで、臨床に新たな知見を増やすことができます。そして、広く薬のリスクを知らせる役割を果たすことができます。そこで、CARE guidelineを利用して症例報告を書くと、症例報告の正確性・透明性・有用性が増すので、新たな知見の価値を高めることができるため有益です。

 EBMのエビデンスレベルを示すおなじみのピラミッドは、トップからSystematic reviews Randomized controlled trials → Observational studies → Case report(症例報告)→ Historical use, Expert opinion の順で示され、症例報告のエビデンスレベルは下層に位置します。しかしながら、症例報告にしか提供できない種類の情報があることから、CARE guidelineで一定の指針を示すことは、その情報に対する質の担保をしようという動きだととらえています。

 私自身、症例報告の論文投稿の経験はないのですが、経験した症例を振り返ってまとめるときにも、このガイドラインの視点は役に立つと感じています。皆さんも是非一度CARE guidelineをご覧になり、日々経験した症例の中で、新しい知見として広く知ってもらいたい事象を報告できるようにまとめてみてはいかがでしょうか。

参考文献:

1)Gagnier JJ, Kienle G, Altman DG, Moher D, Sox H, Riley D, CARE Group. The CARE guidelines: consensus-based clinical case report guideline development. J Clin Epidemiol. 2014;67:46-51.

2)Equator Network(Enhancing the QUAlity and Transparency Of health Research) https://www.equator-network.org/

3)  Scientific Writing in Health and Medicine (SWIHM) https://www.swihm.com/(ツールのダウンロードには無料登録が必要です)

4)Wu H, et al. : Kounis Syndrome Induced by Anisodamine: A Case Report. Int J Gen Med. 2020;13:1523- 7

5) Mitsis A, et al. : Coronary spasm secondary to cefuroxime injection, complicated with cardiogenic shock - a manifestation of Kounis syndrome: case report and literature review. Eur Heart J Acute Cardiovasc Care. 2018;7:624-630.

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