生涯教育(CE)

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2021/12/31

第188回コラム「2021 ASHP Midyear Clinical Meetingに参加して」

岩澤 真紀子, Pharm.D., Ph.D, BCPS

 毎年12月に行われる世界最大の薬剤師の学会として知られる「ASHP Midyear Clinical Meeting」は、今年もバーチャルミーティングとなった。COVID-19感染が拡大する前は、2年ごとに学会に参加していた。実際に現地で参加することは、旧友との再会・情報交換、新たな人的ネットワークの構築、薬剤師業界の動向調査、活気ある学会の雰囲気や自信に満ちた薬剤師の姿からの刺激等、様々なメリットがあっただけに、パンデミックの収束を願ってやまない。一方、バーチャルミーティングは、それはそれで有意義な点があった。例えば、現地参加だと時差に体が慣れるまでに時間がかかるため、講演を聴講する際に集中できないことが多々ある。さらに、聴講したい講義のスケジュールが重なっていることがあり、事前にスケジュールを立てなければならない。その点、バーチャルだと様々な講義を自由に受講できることや、聞き逃した際に録画を巻き戻して聞き直せることはメリットだった。この他、現地開催と比べて学会参加費が安く渡航費用がかからないため、より多くの方が参加できたのではないかと思う。今回は、聴講した講義の中から印象的だった内容をいくつか紹介する。

The Oldest Old85歳以上の心房細動患者に対する脳卒中予防

 医薬品添付文書や診療ガイドライン等において、高齢者を65歳と定義して情報が整理されることが一般的である。しかし、高齢化社会となり65歳以上の人口が増加している状況の中、実臨床において65歳の年齢区分だけで薬物治療を考えることは難しい。今回、心房細動患者におけるDOACの薬物療法の講義の中で、85歳以上を「The Oldest Old」と表現していたのが印象的だった。脳卒中の患者における85歳以上の高齢者は17%を占めており、その多くが独居であると報告されている。心房細動に起因する脳卒中リスクが高く、死亡率も高い。80歳以上の健常者における脳卒中リスクは20%という報告がある一方で、80%以上の脳卒中は予防可能である。

 脳卒中予防に重要な役割を果たす薬剤に抗凝固療法があるが、米国においては有害事象が最も報告の多い薬剤であり、その70%は防止可能と報告されている。出血リスクの面からワルファリンよりDOACを選択するほうがよいとされるが、85歳以上の患者に対しては次のことを考慮することが推奨されている。①ナーシングホームの住人の60%はCrCl30mLである、②ポリファーマシーと薬物間相互作用がよくみられる(アピキサバンとリバロキサバンはCYP3A4P-グリコプロテインの基質である、ダビガトランとエドキサバンはP-グリコプロテインの基質である)、➃フレイルのアセスメント(体重45㎏以下、BMI18kg/m3、臨床フレイルスコア<6)、⑤出血や貧血の既往歴。

 85歳以上におけるDOACの適正用量に関するエビデンスも集積しており、オフラベル(適応外使用)であるものの、エドキサバン15㎎ 1日1回、アピキサバン2.5㎎ 12回が推奨されている。

バンコマイシンと急性腎不全

 米国では2020年にバンコマイシンガイドラインが改訂され、トラフ値をモニタリングすることによりバンコマイシンの投与設計をする方法から、AUCに基づく投与設計およびモニタリングする方法が推奨された。この理由として、トラフ値の目標値を15-20mcg/Lにすることにより急性腎不全のリスクが上がること、トラフ値はあくまでも推定でありバイアスを生じやすいこと(正確なトラフ値測定をするためには、定常状態かつ血行動態状態が安定している患者で、正確な時間にバンコマイシンが投与されていなければならない)、AUCに基づく投与設計をする場合、有効性はトラフ値モニタリングと類似しているが、急性腎不全が減少することが示されたからである。急性腎不全の頻度に関する報告は臨床試験によりばらつきがあるが(5~43%)、多くのイベントは投与開始後4〜5日後に生じている。急性腎不全は治療中止後1週間以内に改善することが多いが、バンコマイシンに起因する急性腎不全は様々な問題がある。例えば、血清クレアチン値が上昇する時には既に腎機能障害が進行している可能性が高く、軽度の腎不全であっても入院死亡率の上昇、入院期間延長、医療費の高騰につながる可能性があること、心血管イベント、免疫不全による感染等の腎臓以外の臓器にも影響することがあることである。このため、急性腎不全を防止することは非常に重要である。

薬剤師外来の拡大

 2021年の全米調査によると、46.2%の病院が薬剤師外来サービスを導入しており、その種類も拡大している。薬剤師外来の種類は、多い順に抗凝固療法(25.8%)、がん(23.2%)、糖尿病(16.9%)、家庭医療(16.8%)、高血圧(15.8%)、感染症(11.6%)、移植(8.4%)、疼痛(6.5%)である。一方、まだ数は少ないものの、2018年より、ゲノム薬理学のサービスが広がっており、現在3.3%の病院で薬剤師外来が導入されている。ゲノム薬理学の対象となる薬剤は、次の通りである。abacavir, abemaciclib, ado-trastuzumab, clopidgrel, codeine, irinotecan, nivolumab, phenytoin, SSRIs, simvastatin, tacrolimus, thiopurines, Tricyclic antidepressants, warfarin

Telehealth(遠隔医療)

 2021年の全米調査によると、薬剤師による遠隔医療を提供している病院は28.4%、その内訳は、電話サービス(70.9%)、ビデオチャット(25.2%)、電子メール(0.6%)と報告されている。41.0%の病院が、遠隔医療を有料サービスとして提供している。薬剤師が遠隔医療サービスを提供している疾患としては、多い順に糖尿病(52%)、高血圧(40%)、喘息およびCOPD(28%)、脂質異常症(18%)、循環器疾患(心不全、冠動脈疾患等)(16%)、禁煙指導(8%)であった。

 このほか、COVID-19感染関連のトピックも多く、ワクチンやワクチン予防接種に関する内容も数多くあった。まだエビデンスを蓄積中のトピックでありデータが日々更新されているため、今回は紹介を差し控えたい。

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