生涯教育(CE)

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2021/09/30

第185回コラム「チーム基盤型学習(Team-Based Learning; TBL)の実践」

磯 友菜, PharmD

 アメリカの薬学教育では、チーム基盤型学習(Team-Based Learning; TBL)を取り入れた授業が増えています。私の受け持つ医薬品情報と文献評価の講義でもチーム基盤型学習を取り入れていますので、その取り組みについて報告させていただきます。

 従来の授業形態(Traditional Classroom)と反転した授業形態(Flipped Classroom1),2)

従来の授業形態では、教員主導で講義が進み、生徒は主に講義を聞いてノートを取り、授業外で課題をこなしていました。反転した授業形態では、生徒は講義を授業時間外に、ビデオなどを用いて自習し、授業時間内では、生徒が主導となり、課題をグループでこなします。この授業形態を取り入れることで、生徒の学業成績の向上、授業への積極性の向上、講義内容の理解度の向上など様々な利点が報告されています。チーム基盤型学習は、この反転した授業形態を実践する刷新的なアプローチです。

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チーム基盤型学習とは3)-7)

チーム基盤型学習は、授業開始前の生徒の予習と授業内での知識の応用を強調した、少人数(5〜7人)のグループ学習形式です。授業は以下の3つのステップから構成されます。

ダウンロード - 18520e59bb32.pdf

  • 授業前の事前学習(Pre-class Learning)

生徒は授業が始まる前までに、与えられた資料を用いて、事前学習を完了させます。事前学習資料は、教科書、ハンドアウト、論文やビデオなど、その授業や生徒のレベルにあったものを準備します。

  • 授業内での準備保証テスト(Readiness Assurance Test; RAT)

授業内では、最初に個別の準備保証テスト(individual RAT; iRAT)を受けます。テストは通常、5〜10問の複数選択の簡単な問題から構成され、生徒は資料を用いずに(Closed book)解答します。次にチームの準備保証テスト(team RAT; tRAT)を受けます。これは、iRATと同じ内容のテストですが、今度は個別ではなく、割り当てられたチームで議論をしながら答えを導きます。各チームのメンバーは同じtRATの点数を得ることになります。どちらのテストの点数も、各生徒の総合成績に含まれます。テストの後は、生徒に間違った問題やわかりにくかった問題をインストラクターにアピールする機会が与えられ、クラス全体でその問題に対して議論します。このテストのアプローチは総合成績に影響するため、生徒が事前学習をし、授業に出席し、チームディスカッションに積極的に参加することを促すためにとても有効的です。

  • 知識の応用に焦点を当てた演習(Application Exercises)

授業の残りの時間は、生徒が事前に学習した知識を応用するための演習に当てられます。この演習は、知識を試すためではなく、応用することに焦点を当てているので、資料を参照しながら(open book)、チームごとに議論して与えられた課題をこなしていきます。この演習問題もチームベースなので、各チームのメンバーは同じ点数を得ることになります。演習問題を提出したら、最後にクラス全体でのディスカッションを促して、トピックと問題に対する適切な回答を模索します。

 改良したTBL を用いた授業も報告されています。FakhriRavariらは、一回の授業に対し、二種類のiRATを導入しています。一つは、授業前に、自宅で資料を参照しながら受けるiRAT、もう一つは授業中に資料を参照せずに受けるiRATです。自宅でのiRATには、解答すると同時に、正誤の根拠を自動的に表示させるようにして、事前学習の更なる理解度の向上を促しています。8)

チーム基盤型学習の実践

 私の授業では、学期の最初に5〜6人ごとのチームを決めます。生徒は学期を通して全てのtRAT、演習、そしてジャーナルクラブをこのチームごとにこなしていきます。事前学習のための資料は、パワーポイントのプレゼンテーションを録画したもの(30分〜1時間)とハンドアウトを配布しています。授業は週一回、110分で、一回の授業で一つのテーマを扱います。生徒は授業の開始と同時に5問のiRATを5分間で解答し提出します。その後、チームに分かれ、同じ問題のtRATを、チームごとに議論しながら10分で解答し提出します。全チームが提出し終わったら、10〜15分ほどかけて、クラス全体でRATの問題を議論しつつ、わかりにくかった点や間違いの多い点などを解説していきます。演習は30〜40分ほどかけて、各グループで資料を参照し議論しながら問題を解き、提出します。全チームが提出し終わったら、残りの時間をかけて、クラス全体で演習問題の議論と解説をします。

 実際にチーム基盤型学習を実践してみて、導入の一番の難関となるのは、事前準備の大変さだと感じました。ハンドアウトを作成し、講義をあらかじめ録画し、授業日の数日前までに生徒に配布、またテストと演習問題も作る必要があります。授業をしてみて実感したことは、出席率の高さと授業へ積極的に参加する姿勢です。グループで常に議論をしているため、居眠りする生徒はおらず、また議論することによりさらに疑問が出てくるため、様々な質問も飛び交います。一方で、なかなか議論に加わることのできない生徒がいたり、グループ内で役割分担してしまい議論にならないケースなどもあり、教員側のファシリテーターとしての役割の重要性も実感しました。

参考文献:

  • Jakobsen, K. V., & Knetemann, M. (2017). Putting Structure to Flipped Classrooms Using Team-Based Learning. The International Journal of Teaching and Learning in Higher Education, 29, 177-185.
  • Lopes, A. P., & Soares, F. (2018). Flipping a mathematics course, a blended learning approach. Proceedings of INTED 2018 Conference,3844–3853.
  • Michaelsen, L. K., Davidson, N., & Major, C. H. (2014). Team-based learning practices and principles in comparison with cooperative learning and problem-based learning. Journal on Excellence in College Teaching, 25(3&4), 57-84.
  • Team-Based Learning Collaborative. (2019). Retrieved September 26, 2021, from http://www.teambasedlearning.org/definition/.
  • Brame, C. J. (2013). Team-based learning. Vanderbilt University Center for Teaching. Retrieved September 26, 2021. from https://cft.vanderbilt.edu/guides-sub-pages/team-based-learning/.
  • Burgess, A., van Diggele, C., Roberts, C., & Mellis, C. (2020). Team-based learning: Design, facilitation and participation. BMC Medical Education, 20(S2).
  • Jansen, T. (2018). A team-based learning adventure. Training. Retrieved September 26, 2021, from https://trainingmag.com/a-team-based-learning-adventure/.
  • FakhriRavari, A., & Nguyen, L. (2020). Double iRATs with Immediate Feedback Experience in a Team-Based Learning Infectious Diseases Pharmacotherapy Course [Poster presentation]. American Association of Colleges of Pharmacy Annual Meeting.

2021/09/09

第11回日本薬剤師レジデントフォーラムのお知らせ

2021年11月6日(土)10:00~17:00に、Web開催(ライブ配信)で「第11回日本薬剤師レジデントフォーラム」が行われます。

年会では、レジデントを修了した方、現在レジデントをしている方、レジデントに興味を持っている学生の方のお話が聞ける他、米国で臨床薬剤師をされている城戸和彦先生より「米国における薬剤師レジデント教育」、ささえあい医療人権センターCOML理事長の山口育子先生より「医療ニーズに対応した薬剤師教育の在り方」についてご講演いただきます。

是非ご参加ください。

http://www.den-entry.com/14reg/top.php

事前登録:2021年8月10日(火)~ 2021年10月11日(月) 17:00

本大会はWeb開催のため、当日の参加受付を行いません。

学生の参加料は無料です。

 

 

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