生涯教育(CE)

« 新年のご挨拶 | トップページ | 第178回コラム「日米における薬剤師の雇用形態の違い」 »

2021/01/06

第177回コラム「「薬剤師教育の前に人間教育」

 中川直人

 今回のコラムで私のタイトルをこれにしたのには理由があります。

 日本の高校生は長きにわたり、偏差値偏重の大学選びをしてきました。かくいう私も例外ではありません。私の大学受験時は「受験戦争」という言葉で表現されていた時代でした。

 ある時、永守重信さん(日本電産 代表取締役会長(CEO))のインターネット上の記事を拝読しました。印象深い文章が以下のものです。

「偏差値が高い大学の学生を採用して仕事の現場に立たせても、英語がまったく話せない。営業をさせても注文が取れない。理工学部出身なのにモーターの基礎もわからない。それどころか、きちんとした挨拶もできなければ、着席するときの上座と下座すら知らない新卒社員は珍しくないのです。東大や京大のようなブランド大学から採用してもそこまで状況は変わりません。

 出身大学とビジネスの結果に相関があるのかと疑問を感じ、00年ごろから採用した新卒社員1人ずつについて、仕事の成果のデータを取ってみました。すると一流大学を出た社員も三流大学の出身者も、10年ほど経つと何も変わらないことがわかりました。それどころか同じ年次の入社でも、三流大学出の社員のほうが活躍していることもよくあったのです。」(https://president.jp/articles/-/34638

 私が大学病院で薬剤師として従事していた時の新人薬剤師に対する印象は、「どこの大学を卒業しても持っている知識レベルはどんぐりの背比べ」でした。偏差値の高い薬学部を卒業していようがいまいが、薬剤師としてスタート地点に立った新人の知識レベルは大差はないと思います。では、社会にでてから頭角を現す薬剤師はどういう人たちなのでしょうか?

 薬剤師教育の前に人間教育が必要だと私が感じたのは、ある出来事があったことがきっかけです。

 本学は、コロナ禍でありながらも早くから対面授業の再開に踏み切りました。教員は朝当番を組み、1限目の始まる教室の前で学生の体温チェック表の確認やマスク着用の有無などを確認しています。全学生は毎日このチェックを通って特に問題がなければ入室が許可されます。

 ある時、体温チェック表の列とは別の方法で入室した学生が目撃されて教員側に報告が上がりました。完璧な人間はいませんので、百歩譲って、煩わしいチェックを回避したいという感情が学生に生まれることは仕方ないとしても、医療人教育を受けているものとしての自覚の低さを痛感するとともに教員側にも負の感情が生まれました。

 能力が高くても十分にその能力を発揮できずに第一線から姿を消していくプロスポーツ選手はたくさんいます。このことは薬剤師の世界でも同じことが言えます。入職当時は優秀な成績で入ってきたものの、5年・10年経つと普通の薬剤師の仕事しかしていなかったりします。能力をいかんなく発揮するためには、その土台となる人間性がなによりも大事なのです。

 人間性を磨くにはどうすればよいでしょうか。それは日頃から「心」を育てることだと思います。

  1. 心を使う・・・未来を描くことで心を使うことができます。
  2. 心をきれいにする・・・清掃、奉仕活動、エコ活動などを通じて心をきれいにすることができます。
  3. 心を強くする・・・日誌や活動を継続することで心が強くなります。
  4. 心を整理する・・・毎日を振り返ることで心を整理することができます。
  5. 心を広くする・・・感謝の気持ちをもつことで心を広くすることができます。 

 私事で恐縮ですが、例えば・・・

  1. 心を使う・・・1回の講義で知識の定着が確実に図れる教育方法を見つけて、本学の学生の学力を伸ばしていこう。
  2. 心をきれいにする・・・自分の居室を毎朝床拭きしています。居室前の廊下も併せてしています。また、帰宅したら玄関にある家族の靴を揃えます。
  3. 心を強くする・・・日誌を毎日継続してつけて1日の振り返りと翌日のイメージトレーニングをしています。
  4. 心を整理する・・・3と共通しますが、1日を振り返り、今日のよかったことや気づいたことなどを日誌に書き記します。また、今日をもう一度やり直せるならどうすればよかったも書き記します。
  5. 心を広くする・・・日誌には必ず感謝の言葉を書き記します。日頃対立している人間関係の方でも、今日は助けてもらったなと感じられたときは感謝の言葉を書き記します。

 私は自分自身がもっと変化していく必要があると思っています。自分の「心」をもっと育てて主体変容し、人間性のある薬剤師の教育に努めていきたいと思います。

« 新年のご挨拶 | トップページ | 第178回コラム「日米における薬剤師の雇用形態の違い」 »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 新年のご挨拶 | トップページ | 第178回コラム「日米における薬剤師の雇用形態の違い」 »

2022年11月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30      

薬学関連のサイト

最近のトラックバック

無料ブログはココログ