生涯教育(CE)

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2019/09/26

第160回コラム「米国における卒後研修制度とその役割」

磯 友菜, Pharm.D.

 アメリカの卒後研修には大きく分けてレジデンシープログラムとフェローシッププログラムがあります。12レジデンシーは臨床、フェローシップは研究に主を置いていることが大きな違いですが、どちらもそれぞれのプログラムによってその内容は大きく異なります。アメリカの病院では、薬剤師は大きく臨床薬剤師とスタッフ薬剤師の二つのポジションに分けられます。臨床薬剤師は、病棟での薬物治療管理が主な役割で、スタッフ薬剤師は薬局内でオーダーの監査が主な役割です。現在のアメリカの状況では、病院で臨床薬剤師になるには最低1年のレジデントの経験が必要な場合がほとんどです。そのため、レジデンシープログラムのマッチングは年々競争率が高くなっており、2019年のPGY1のマッチ率は、一次と二次を合わせて64%でした。3(レジデンシー制度は、American Society of Health-System Pharmacists[以下ASHP]という団体から認定を受けているものと、いないものがあり、認定を受けているプログラムはマッチングシステムを通してポジションを獲得する必要があります。)

 レジデンシープログラムは通常12年で構成されており、PGY1(卒後1年目)は薬剤師としての幅広い職能を身につけ、PGY2(卒後2年目)ではもっと専門的な知識やスキルを磨くことを目的としています、プログラムの中には、PGY1PGY2が組み合わさっているものや、PGY1PGY2に加えてMBAMPHなどの修士を合わせたものなどもあります。ASHPによると、レジデンシートレーニングを終えることの利点として、臨床で働くための準備に加えて、就職する際に優位になること、ネットワークを広げる機会になること、将来のキャリアプランが明確になること、そして様々な状況における薬剤師の役割の違いを見る機会になることをあげています。

 レジデンシープログラムは、新人薬剤師の育成が主な目的ですが、病院やプログラム側にも人材の確保以外の大きな利点があります。そのうちの一つに、ほとんどのレジデントが行うプロジェクトが挙げられます。レジデントには、日々のローテーションでの薬剤師としての業務に加えて、病院・薬局の質改善プロジェクトもしくは研究プロジェクトを行うことが課せられています。これはASHPが掲げるレジデンシープログラムの目標の一つに、「レジデントは業務の評価と調査、データの検討、科学的根拠を集約するにより、患者ケアと薬物使用システムを改善する」ことが挙げられているからです。4これに加えて、レジデントは教育・指導活動も行います。患者に対する教育・指導だけでなく、病院に実習に来ている薬学部の学生の指導、薬剤師や他職種の医療従事者に向けた指導、公衆に向けた指導などが含まれています。アメリカでは、薬剤師免許の更新のために講習を受けますが、そのレクチャーを提供することも、レジデントの役割の一つです。

 ASHPは2020年までに、すべての直接臨床に関わるすべての薬剤師にレジデンシートレーニングを必要条件にすることを目標としていました。5病院だけでなく、薬局、Managed Care Pharmacyや外来診療薬局などでもレジデンシープログラムが導入され、プログラム提供する施設の数は格段に増えています。2008年の段階では、実現可能と予測されていましたが、需要の高まりは大きく、2020年までに実現させることは難しそうです。6

参考文献

  1. Ashp.org. (2019). Residency Information. Available at: https://www.ashp.org/Professional-Development/Residency-Information [Accessed September 7, 2019].
  2. Accp.com. (2019). ACCP - What Is a Residency and How Do I Get One?. Available at: https://www.accp.com/stunet/compass/residency.aspx [Accessed September 7, 2019].
  3. National Matching Services Inc. (2019). ASHP Match Statistics. Available at: https://natmatch.com/ashprmp/stats/2019applstats.pdf [Accessed September 7, 2019].
  4. Ashp.org. (2019). PGY1 Residency Accreditation Standard - 2016. Available at: https://www.ashp.org/-/media/assets/professional-development/residencies/docs/pgy1-residency-accreditation-standard-2016.ashx [Accessed September 7, 2019].
  5. Johnson, T. (2008). Pharmacist work force in 2020: Implications of requiring residency training for practice. American Journal of Health-System Pharmacy, 65(2), pp.166-170.
  6. Knapp, K., Shah, B., Kim, H. and Tran, H. (2009). Visions for Required Postgraduate Year 1 Residency Training by 2020: A Comparison of Actual versus Projected Expansion. Pharmacotherapy, 29(9), pp.1030-1038.

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