生涯教育(CE)

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2018/04/25

第143回「小児薬物治療評価における医薬品情報」

    渥美 景子

最近小児の病棟業務に携わるようになり、小児薬物治療を評価する機会が多くなった。評価にあたり日本の情報のみでは十分な情報が得られないことも多く、海外の書籍や文献も参照している。もう10年以上前だが、私は英国の臨床薬学修士課程で選択科目としてPediatrics(小児科学)を履修した。今回は、当時の資料を元に英国ではどのように小児薬物治療を評価していたのかをまとめてみた。

英国における小児の医薬品情報源

英国では、成人だけではなく小児薬物治療においてもフォーミュラリー(適応や用法用量、副作用、薬価など、薬に関する情報が書かれている医薬品集)が使用され、国土全体、さらには病院ごとに、薬物治療が標準化されている。私が英国の臨床薬学修士課程で実習していたRoyal London Hospitalは、ロンドンでも大きな小児部門を持つ病院の一つだった。調剤室実習の際、小児の処方を調剤していると、近くにいた薬剤師が「これを参照するといい」と言って病院独自の小児フォーミュラリーを見せてくれた。小児でも薬の投与量などの目安が細かく明確になっていることに驚いたことを覚えている。また、当時お世話になっていた研究室の教授が、英国全土共通の小児版フォーミュラリー(小児British National Formulary(BNF-C))の編集に携わっており、2005年に初めて発行されたことは今でも私の記憶に残っている。現在、BNF-Cは毎年更新されており、英国の小児薬物治療の標準化に役立っているようである。

英国臨床薬学修士課程におけるPediatrics

英国で選択科目として履修したPediatricsでは、学校での授業は3回しかなく、その合間に病院実習を行ったり、授業に向けての準備や課題を提出したりする形式だった。大学の授業では、小児薬物治療の評価方法、鎮痛・鎮静、感染症、新生児などに関するものの他、患者と患者の親への服薬指導のロールプレイ、学生各自が実習先の患者を評価したものをグループ内で発表しディスカッションするPBLのセッションなどが盛り込まれていた。また、課題として、PBLの授業に備えて患者の評価をまとめたレポートの事前提出や、授業とは別に、患者の薬物治療の評価や退院後のフォローの計画をまとめたPatient Profileの提出などがあった。Royal London hospital の小児病棟実習の初日には、指導薬剤師から新人薬剤師向けのイントロダクションの資料を頂いた。そこには薬剤師としての小児処方の確認方法、確認する上での注意点がいくつか記載されていた。そのうち医薬品情報検索については、病院の小児フォーミュラリーと病院の疾患ガイドラインがあるものはそちらを参照すること、記載がなければ他の施設のフォーミュラリー(Guys and St Thomas病院(ロンドン市内の大きな教育病院の一つ)のフォーミュラリーなど)を参照すること、それでも見つからなければMicromedexを参照せよと記載があった。その他いくつか情報源となる英国のサイトや連絡先が記載されていたが、いずれもオープンアクセスではなく、この記事を書いた時点で私が日本からアクセスすることはできなかった。実習期間が短かったことも影響していると考えられるが、実習中はMicromedexまで必要としたことはなかった。英国では小児の薬物治療について多くはフォーミュラリーで網羅されており、どの薬剤師でもある程度同じ評価が出来る仕組みになっていた。実際、学生だった私も評価しやすく感じたのを覚えている。

日本での小児の医薬品情報源

日本では英国のフォーミュラリーのようなものは存在しないので、自分で情報を集め、評価しなければならない。私が小児薬物治療評価の際によく参照している主な資料・データベースは以下の通りである。

l 新小児薬用量 改訂第7版(診断と治療社出版)

l 新生児室・NICUで使う薬剤ノート 第4

l 神奈川県立こども医療センター 新生児診療マニュアル 第6版

l Pediatric & Neonatal Lexi-Drugs (小児Lexicompweb)

l ハリエットレーンハンドブック第2

l 小児BNF 2017-2018

l NEOFAX

l Micromedex

l Up to date

l Stockley’s Drug Interactions11版(相互作用に関して)

l ネルソン小児感染症治療ガイド

l 最新感染症ガイドR-book(日本版Redbook

l 小児疾患の各種ガイドライン

l 医中誌Web

l Pubmed

情報が散らばっており、必要な情報を網羅するのがやや大変な時もある。しかし、医薬品情報を収集し、治療を評価することは、薬剤師としての重要な役割の一つである。今後も適切な情報収集、評価に努め、小児薬物治療の適正化に貢献していきたいと思う。

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