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2018/03/25

第142回コラム 「医薬品集との付き合い方」

上塚 朋子, Pharm.D.

「今年は何色かな?」 

 この時期になると,新年度の治療薬マニュアル(医学書院)の表紙の色を予想するのがちょっとした楽しみなのです.各出版社から様々な医薬品集が出版されていて,毎年いろいろな特徴が付加され進化していますので,そんな医薬品集との付き合い方を取り上げたいと思います.

 お薬110番のサイト(1で紹介されている医薬品集(医療用医薬品)の中から,2018年度版の発売が確認できたものを挙げると;

 

 今日の治療薬 解説と便覧(南江堂)

 治療薬マニュアル(医学書院)

 治療薬ハンドブック(じほう)

 ポケット医薬品集(白文舎)

 ポケット版 治療薬UP-TO-DATE(メディカルレビュー社)

 治療薬インデックス(日経BP社)

 Drugs-NOTE ドラッグノート(じほう)

 

 筆者自身,すべてに目を通した訳ではないですが,それぞれの医薬品集は大まかに,添付文書情報の抜粋と付録の構成になっています.実務実習で薬学生にその他の資料と比較して,医薬品集の利点・欠点を挙げてもらうと,重い・字が小さくて見にくい,図がなくて分かりにくい,情報の更新が年1回に限定されるなどといった欠点が挙がります.近年は,Web電子版の使用が可能な医薬品集があったり,携帯性を高めることに主眼を置き,ポケットサイズを維持しているものもあり,その欠点をカバーしています.一方で,オンラインの医薬品集や電子カルテに搭載されている医薬品集と比較すると,手元にもってさえいればログインの手間無く,どこでもすぐに調べられる,停電や災害時にも強い,自分で書き込みができるなど,利点も多く挙げられます.「手元にあると,なんとなく安心」という感覚を持つ薬剤師も多いのではないでしょうか.

 どの医薬品集が良いかは,経験年数,どんな場面で使用することが多いか,個人的な好み等によって一概には言えないので,書店で手に取ってみたり,同僚のものを見せてもらったりして,比較してみるとよいです.これといったものが決まらない間は,毎年違う医薬品集を試してみるのも面白いです.

 購入したらまず,使い方が記載されたページを読みましょう.学生や新人薬剤師から,「◆のマークって,●●っていう意味ですか?」と凡例について質問されることが時々ありますが,それらの凡例は各医薬品集独自の定義であって,普遍的ではありません.感覚で誤った解釈をしてしまわないためにも,一つ一つを覚える必要はないですが,疑問に思った時はどのページに戻ればよいかを確認しておきましょう.膨大な添付文書情報を限られたスペースに収めるために,各社アイディアを凝らして工夫しているので,見せ方が異なります.省かれた情報が必要となった場合や記述が不十分で正確に理解できているか不安な場合は,あたりまえですがオリジナルの添付文書を参照する必要があります.

 紙媒体の医薬品集の好きなところは,薬効群ごとに薬剤が一覧表で掲載されているページと,その先数ページ続く解説ページです.院内採用薬に印をつけて,薬効群ごとに頭の整理をするには最適です.経験の浅い時期は,薬効群ごとに薬や疾患の治療の概要がまとめられているので,全体像をつかむために利用していました.

 添付文書情報以外の付録の部分は,各医薬品集の特徴が出るところでしょう.処方箋の記載方法等の基本的知識であったり,妊婦・授乳婦への薬剤の投与といった情報が掲載されています.本来詳細に解説した成書はあるものの,いきなり立ち向かうにはハードルが高く先延ばしにしているという方には,付録として専門の先生方によりまとめられたエッセンスに目を通すのをおすすめします.会議や勉強会で会場に早く着いてしまい手持ちぶさたな隙間時間に読んでみると,有意義な時間を過ごせます.

 紙媒体として捨てがたい点は,書き込みができるということです.実際にはページは情報で埋め尽くされていて空きスペースがないので,蛍光ペンで印をつけるか,付箋を貼ったり,別紙を挟むことになります.筆者はPMDAからの添付文書改訂の情報の中で,大きなものがあった場合(最近だと例えば,ガドリニウム造影剤)やFDAで副作用情報が出された場合等に,その内容を該当薬剤のページに挟んでいます.先日,センター試験の世界史で満点をとった受験生の参考書が付箋や書き込みですごいと,某予備校の先生は「もはや原形をとどめず,凄まじいオーラを放っている」と称してTwitterで話題になり,似たような医薬品集を持っていた後輩を思い出してしまいました.ただし,医薬品集の場合,翌年この情報をどのように継承していくかというのが問題なのです.1年かけて育て上げた相棒との別れは惜しいのですが,手作業で引き継ぐのもなかなか面倒というもの.毎年の恒例の儀式のように,丁寧に作業する同僚もいましたが,私は適当に間引いて更新しています.

 最後に,こんな格言を通して医薬品集の守備範囲を考えてみましょう.

“The telephone book is full of facts, but it doesn’t contain a single idea.”

(電話帳は事実で満載だが,アイディアは一つとして含まれていない)
 
                             Mortimer Adler(哲学者・教育者)

 医薬品集は電話帳のようなものです.薬剤師のよい相棒ではありますが,薬剤師として必要な知識を得るだけでなく,使いこなすためには, その他の相棒も見つけないといけません.今のあなたにとっては何でしょうか?

 

参考文献

 1. おくすり110番 くすり本NAVI http://www.okusuri110.com/book/book_100_top.html

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