生涯教育(CE)

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2017/08/28

第136回会員コラム「臨床論文へのアクセス環境の改善の必要性」

中川直人 Pharm.D., Ph.D.

 私は平成26年度医薬品情報学会課題研究班の検討において、「日本および米国における薬剤師の臨床試験の論文利用に関する意識調査」というタイトルで検討しました(http://www.jasdi.jp/muvr75n4p-197/#_197)。その結果、臨床論文を読む習慣をもたない日米の薬剤師にとっては、「読む時間がない」とともに、「臨床論文にアクセスできる環境にない」ことも習慣を持たない理由としてあがりました。一方、日本の薬剤師のアンケート結果を詳細に検討すると、病院薬剤師と比較して、薬局薬剤師の方が有意に「臨床論文にアクセスできる環境にない」ことがわかりました。今回は、日本の薬剤師を取り巻く臨床論文へのアクセス環境について考えてみたいと思います。

 私が卒業したNova Southeastern University (NSU)の医療系図書館は、卒業生として新たに図書館のアカウントを登録(無料)すれば、卒業生に対して、図書館が契約している医療系データベース(UpToDatePubMedなど)の使用を認めています。したがって、現在も私はNSUの図書館のウェブサイトを利用しています。また、PubMedで医学薬学関連の論文を検索して、読みたい論文の雑誌がNSUの図書館が契約している電子ジャーナルにない場合は、Interlibrary loan(対外文献)サービスを無料で利用できます。NSUの図書館は、2日もあればPDFファイルとして論文を取り寄せてくれます。このように、少なくともNSUの卒業生は、就職先が医学薬学系のデータベースと契約していなくても、母校の図書館のサービスを利用して論文にアクセスすることができます。

 日本の薬剤師に対してもこのような環境を提供することができないものでしょうか?つまり、薬系大学図書館の門戸開放ができないかということです。

 学生時には、医薬品情報学で臨床論文の検索方法を学びますが、社会にでてからそのスキルを活かすことができないのが、現在の日本の薬剤師がおかれている環境ではないでしょうか?大学病院に勤務している薬剤師は、医学部の図書館があるので論文検索には困らないと考えられますが、中小病院に勤務している薬剤師や薬局薬剤師は、製薬会社のMRを通して論文を手に入れることがあるとよく聞きます。現状としては、一部の薬剤師(大学病院勤務)を除いて、日本の薬剤師にとっては、臨床論文へのアクセスは制限されているといえるでしょう。

 私は、NSUへの留学を終えて以来、日本の薬剤師に必要なことは、臨床論文を読む習慣を持つことだと主張してきました(109回会員コラム「日本の薬剤師の職能の向上には臨床論文を読む習慣を身につけることが不可欠」http://pharmd-club.cocolog-nifty.com/blog/2015/05/index.html)し、そのための取り組みもしてきました1。今後は、薬系大学図書館の門戸開放を目指した取り組みをしていきたいと考えています。まずは薬系大学図書館の現状把握から検討していこうと考えています。

 第20回日本医薬品情報学会(東京)が7月開催され、「医療従事者への情報サービス―薬学図書館の新たな役割」というシンポジウムを聴講しました。日本薬学図書館協議会として、卒業生に向けた情報提供サービスの向上を今後の課題として掲げていました。また、一部の薬系図書館では、すでに文献提供のためのサービスをしているところもあるようですが、認知度が低いのが現状のようです2。薬剤師の臨床論文へのアクセス環境の改善はこれからだといえるでしょう。

1. 中川直人. 臨床研究論文の批判的吟味の取り組みを進めよう 病院における取り組み 東北大学病院におけるジャーナルクラブの取り組み. アプライド・セラピューティクス. 2014.09;6:47-50.

2. 平紀子. 薬剤師の情報ニーズと薬学系大学図書館における役割 病院薬剤師を対象とした調査結果をもとに. 薬学図書館. 2007;52:211-219.

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