生涯教育(CE)

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2017/07/29

第135回コラム「多職種連携 自ら発言する力」

                 伊野 陽子, Pharm.D.

「多職種連携」「チーム医療」これらが医療の中で重要視されているのは世界共通だと思います。自分の知識やスキルをチームの中で活用できたと感じた時に、やりがいを感じる方も多いのではないでしょうか。

 先日久しぶりにフロリダ大学薬学部を訪れる機会がありました。私が卒業したころと比べてみると、PBL形式の授業を早い時期から開始し、実践的な力、チームで活躍できる力をより重視している印象を受けました。大学1年生の授業見学では、1年生にもかかわらずロールプレイにおいて患者への質問が途切れることはなく、皆で連携しながら患者への丁寧なインタビューを行っていました。また別の授業では、医療に関連した社会的な問題について、スモールグループごとに興味を持った話題について調査をしてプレゼンテーションを行っていました。正装をして堂々と発表している姿を見て、彼らが大学に入って6週間足らずと聞き驚いたものです。

 人前で話す力に長けている学生たちを見て、国民性の違いかと思っていましたが、大学教員に尋ねたところ、「最初はだれでも緊張するもので、自分の初めてのプレゼンテーションもひどいものだった」と教えてくれました。それでも薬剤師の仕事において人前で表現する力は重要だと考えているため、フロリダ大学においては薬学部に入るためには「Public Speaking」という弁論術の単位を必須としているとの事でした。また、学生を指導するときのコツとしては、小さい規模の発表から始めて、だんだんと課題の難度を挙げていくことがよいとも教えていただきました。また、ロールプレイ形式の授業を見ていて感じたことは、学生の発言に対して指導教官が「今のはとてもいい質問だ」「今のいい方はとても良かった」とできている部分をしっかりと褒めることにより、発言しやすい空気が生まれているように感じました。

 Pharm.D.課程での実務実習における評価の中で一番最初に来る項目は「Team Interaction/Education」でした。薬物治療に関連する問題を見つけ、それらに対する提案をチームの中で行えたか、薬物治療に関連する情報をチームに提供できたかといった情報提供、また医療従事者対象のプレゼンテーションにおけるパフォーマンスが評価の対象となります。相手を説得するためは、納得させられるだけのエビデンスを示す、一律のガイドラインではなく患者に沿ったプランを示す、相手が必要な時に必要な情報を提供できるようタイミングに気を配る、など様々な要素が必要となります。最高到達点とされるパフォーマンスは「チームに対して適切にまとめられた情報を積極的に提供する、チーム内の疑問点・正しく理解されていないことを探し出すことが出来、チームのメンバーとして不可欠な存在となる」となっており、薬剤師から能動的な働きかけが出来たか、またチームの中に隠れている問題点を抽出することが出来たかを確認する内容となっていました。また実際の実習の中では、指導薬剤師達が、培養結果が出たことをカルテで確認して迅速に医師に連絡したり、抗生剤の選択をめぐって処方医とディスカッションをする場面があり、積極的にコミュニケーションをとることによって薬物治療の適正化に積極的に貢献しようとしている臨床薬剤師の姿をみることができました。

 日本においても多職種連携教育(Interprofessional education; IPE)の必要性が注目され、医療系の学部もしくは大学連携による学習が取り入れられています。まずは多職種の職能を知ることから始まり、チームの中における自分の職種の役割を知ること、医療従事者間の心理的な垣根を低くすることなど、そのメリットは多いと感じています。チームの中で貢献できた達成感、またはもっとこんな知識・能力をつけておけばよかったと感じることなどが、今後の学習に反映されていくだろうと思います。

ガイドラインの中にも薬剤師の関わりの重要性が示されています。例えば、「高齢者の安全な薬物治療ガイドライン2015」の中の「15.薬剤師の役割」において、薬剤師の関わりは全て「推奨度:強」とされており1)、チーム医療における薬剤師の働きに対する期待は大きいと感じています。この期待に応えていくためにも薬剤師から積極的に情報発信を行い、多職種から信頼を得ることが出来る関係を築いていけるよう日々の研鑽が重要だと感じます。

参考文献 

1.高齢者の安全な薬物治療ガイドライン2015 日本老年医学会

 

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