生涯教育(CE)

2019/08/24

第159回コラム「薬剤師による継続的な服薬指導」

伊野 陽子 Pharm.D.

  厚生労働省は、201811月の厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会にて、薬局・薬剤師のあり方として「来局日以外の継続的な服薬指導」をあげ、「服用期間を通じて、必要な服薬状況の把握や薬学的知見に基づく指導を実施し、その内容等を薬剤師が調剤録に記録することを法律上、義務化すること」を提案し、おおむね支持を得ました。薬剤師の義務として薬剤師法に、薬局開設者の義務として医薬品医療機器等法(薬機法)に、当該規定をそれぞれ新設する方針とされています。平成301018日 第7回 医薬品医療機器制度部会 資料2によると、薬局に患者の来局日以外の服薬期間中における継続的な服薬指導(電話による状況確認等の実施状況)について尋ねたところ、実施したことが「ある」との回答が39.9%であり、「ない」が47.9% と、半数程度の薬局が実施したことがあると回答していました。また、その必要性については、「患者によっては必要だと思う」が65.3%、「必要だと思う」が14.3%であり、合わせると8割ほどの薬局が必要だと考えていました。

 過去のコラムでも紹介されていますが1、退院時患者指導プログラムの一環として、電話を使った薬剤師のフォロー体制の有用性が世界的にいくつか報告されています。オランダでも同様に退院時患者指導プログラムにおける薬局によるフォローの有用性の報告があり2、退院時の患者教育(薬物治療の変更点や注意事項について説明したことを患者に復唱させ、理解度を評価する)、患者の退院後の薬物治療に関する電子記録の作成、薬局薬剤師による自宅訪問を介入として行うことによって、退院後4週間の時点での薬物治療に関する問題点が、コントロール群と比較して介入群で低くなったと報告されています。このプログラムを行う際の事前教育として、テクニシャンに対しては患者理解度を確認する際に必要なコミュニケーションスキルの訓練、薬剤師に対しては自宅訪問を行う際の標準的な方法、患者への対応、記録の取り方についての教育を行っています。

 外来患者に対する遠隔診療における薬剤師のサービスについての報告では、高血圧、糖尿病、抗凝固薬使用などの慢性疾患をもつ患者を対象に行われたものが多く、そのほとんどが電話で行われており、疾患マネジメント、患者自己管理、アドヒアランスに対して介入群でポジティブな結果が多かったこと、活動の特徴として、継続的に予定を立てて行われた活動の方が良い結果をもたらしていることが報告されています3

 日常の忙しい業務に加えて上記の業務を行うことは容易ではありませんが、業務の役割分担や対象患者の選別などを工夫し、地域住民のよりよい薬物治療に貢献できるよう、薬剤師がこれらの活動を考えていく必要があると考えます。

参考文献

  1. http://pharmd-club.cocolog-nifty.com/blog/2017/02/130-05a3.html
  2. Daliri S, Hugtenburg JG, Ter Riet G, van den Bemt BJF, Buurman BM, Scholte Op Reimer WJM, van Buul-Gast MC, Karapinar-Çarkit F. The effect of a pharmacy-led transitional care program on medication-related problems post-discharge: A before-After prospective study. PLoS One. 2019 Mar 12;14(3):e0213593. doi: 10.1371/journal.pone.0213593. eCollection 2019.
  3. Niznik JD, He H, Kane-Gill SL. Impact of clinical pharmacist services delivered via telemedicine in the outpatient or ambulatory care setting: A systematic review. Res Social Adm Pharm. 2018 Aug;14(8):707-717. doi: 10.1016/j.sapharm.2017.10.011. Epub 2017 Oct 28. Review.

2019/07/22

第158回コラム「授乳と薬について」

渥美 景子 

  以前、新生児科部長の医師より、「お薬投与中に授乳可能かどうか、薬剤師さんが網羅的に情報を調べて教えてくれないか。」と言われた。その話が来た時に、誰が受けても同じように答えられるように、情報を改めて整理した。授乳婦への投薬に関する問い合わせはよくあることから、授乳と薬に関する基礎知識や問い合わせを受けた時に参考となる情報を今回まとめてみた。

1.母乳育児の重要性

  母乳育児のメリットとして、母乳に免疫学的感染防御作用や認知機能が高くなるなどの神経学的効果がある、母乳の成分が乳児に最適で代謝負担が少ない、母体の回復を早める、母子相互関係の良好な形成に役立つ、衛生的・経済的で手間もかからない、乳幼児突然死症候群の発症リスクが低下するなど様々なものがあり、母乳は赤ちゃんにとって最良の栄養とされる。厚生労働省に加え、WHO、ユニセフ、米国小児科学会など様々な機関が母乳育児を推進しており、薬の投与により授乳ができない事態は可能な限り避けなければならないと考える。

2.授乳婦に対する薬物治療の原則

  アメリカ小児科学会が2001年9月に出した方針声明には以下のように書かれている1

授乳中の女性に薬を処方する前に、以下を考慮すべきである

  • その薬剤は本当に必要か?必要なら、母親の主治医と小児科医が相談してどの薬剤を

使用するかを決めることが有用である

  • できるだけ安全な薬剤を用いるべきである
  • 児に対するリスクの可能性がある薬剤なら、児の血中濃度を測定することを考慮する
  • 母親に授乳直後に薬剤を服用(または注射)してもらうか、児がまとまって眠る時間

の直前に内服(または注射)してもらうことによって、児への薬剤の影響は最小限にできる

児の血中濃度については測定されている論文は少ないようだが、リスクの可能性を予測するのに目安となる場合もあるようだ。また、薬の投与が短期間で済むのなら、授乳の一時中断も考慮できる。

3.授乳中の投薬について問い合わせが来た時の確認項目2

  以下の項目は判断するのに有用な情報であるため、可能な限り情報を集める。

  • 患者は薬品をすでに服用しているか。妊娠中から服用していたか。
  • 薬品の適応、投与量、用法、用量、施用期間
  • 患者母子の年齢、低体重、未熟児
  • 乳児の健康状態
  • 薬剤を中止することによる影響
  • すでに他の治療は考慮したか

4.授乳婦の投薬に関する医薬品情報源

  授乳婦への投薬に関して、様々な書籍や参考資料があるが、私が参考にしている主なものは以下の通りである。必ず複数の資料を参照してから返答している。

  • 添付文書
  • 授乳婦への投与の記載は、動物実験の結果に基づき書かれていることが多い。そのため、添付文書への授乳婦に関する記載事項を確認することは必要と考えられるが、添付文書のみでは情報が不十分と考えられる。
  • Medications and Mother milk
  • 授乳婦への投与時のリスクがL1~5で示されている。
  • Lact Med https://toxnet.nlm.nih.gov/newtoxnet/lactmed.htm
  • アメリカ国立衛生研究所(NIH:National Institutes of Health)が運営している、授乳中の薬剤服用と児に対する影響に関する無料のデータベース。エビデンスに基づく情報が文章でまとめられている。また、授乳婦への投与を避けたほうが良い時の代替薬も記載されている。
  • 母乳とくすりハンドブック2017 改訂第3版 大分県薬剤師会
  • 添付文書、Mother milk、Briggs、Lactmedの情報がまとまって載っている。そこから授乳可否をどう判断したかが記載されている。日本にしかない薬の情報も載っていることがある。
  • Drugs in Pregnancy and Lactation 11th edition(Briggs)
  • Micromedex
  • 薬物治療コンサルテーション 妊娠と授乳 第2版(南山堂)
  • 向精神薬と妊娠・授乳(南山堂)
  • Drugs During Pregnancy and Lactation: Treatment Options and Risk Assessment(Schaefer)

  もし情報がどれからも得られなければ、RID(相対的乳児薬物摂取量)を目安に考える。RID<10%であれば安全とされる34

  • RID=乳児薬物摂取量(mg/kg/day)/母親の薬物摂取量(mg/kg/day)

  RIDも不明であれば、以下のパラメータから薬の母乳への移行のしやすさを考え、判断の目安にする34

  • M/P(母乳/血漿薬物濃度比):比率が低いほうが、移行が少ない(<1:少ない、1~5:多い)

  ただしもともとの母体血中濃度が低ければ、M/P比が高くても実際の薬剤の絶対的移行量は少ないため、臨床上問題は少ないとされる。

  • MW(分子量): 分子量が低い(<200)ほど移行しやすい
  • PB(蛋白結合率):蛋白結合率が高い(>90%)ほど移行しにくい
  • Tmax:ピークに達する時間は授乳を避ける
  • T1/2 :半減期が短い(1~3時間)ほうが移行しにくい
  • Oral(経口バイオアベイラビリティ):低い方が乳児の薬剤接触が減る
  • pKa(酸解離定数):大きいと(pKa>7.2)移行しやすい

 医師の中には授乳に慎重な人もいる。過去に、複数の情報源より投薬しながらの授乳は可能であろうと判断して医師に情報提供したものの、患者に説明されることなく「念のため母乳はやめてもらう」指示のままになってしまったことがあった。薬剤師としては、可能な限り不要な授乳の中断がされないよう、授乳することのメリットや、今ある薬のデータを伝えて医師の理解を促していくよりほかはない。今後も適切な情報検索を行い授乳に関する情報をアップデートし、エビデンスに基づく情報提供を行っていきたい。

参考資料

  1. American Academy of Pediatrics. Committee on Drugs: The Transfer of Drugs and Other Chemicals into Human Milk, Pediatrics, 2001, 108, 776-789
  2. 聖マリアンナ医科大学病院薬剤部 医薬品情報提供のための基礎情報収集
  3. 母乳とくすりハンドブック改訂第3版2017 大分県地域保健協議会大分県「母乳と薬剤」研究会 編
  4. 「妊娠・授乳と薬」対応基本手引き(改訂2版) 2012年12月改訂 愛知県薬剤師会 妊婦・授乳婦医薬品適正使用推進研究班 発行

 

 

2019/06/19

第157回コラム「アメリカ医療における循環器専門薬剤師の役割」

                城戸和彦, Pharm.D., M.S., BCCP, BCPS

 2018年に専門薬剤師資格の管理機関であるBoard of Pharmacy Specialtiesが管轄する第一回循環器専門薬剤師の試験が行われ、180名の薬剤師がBoard Certified Cardiology Pharmacist (BCCP)になった。循環器医療における薬剤師の関わりは非常に重要であることから、2つの循環器医療団体が循環器薬物治療における薬剤師の役割についての指針を示している。

 まず、一つ目の指針としてアメリカ循環器学会(American College of Cardiology)が提案した循環器医療における薬剤師の役割について紹介する。1

  この指針では、薬剤師の循環器医療における役割を大まかに3つに分けている。

  1. 患者個々における薬剤師の医療への関与:患者服薬指導、薬物治療モニタリング、プロトコールに基づく薬物治療設計など
  2. 個々医療機関における薬剤師の関与:医療安全への関与、フォーミュラリー作成や編集、医療の質改善に向けた院内活動そして、研究活動など
  3. グローバルな規模での薬剤師の関与:ガイドライン作成時の関与、委員会への参加、公衆衛生業務への関与など

1番目と2番目の業務は一般的な内容と言えるが、筆者が当初驚いたことは、3番目の循環器医療ガイドラインに対する薬剤師の関与である。患者個々の医療に関わることに加えて、循環器専門薬剤師が、グローバルな視点でガイドライン作成に関与することが重要であることを再認識する。現状では、心不全、高血圧、脂質異常症など多くの循環器領域のガイドラインに薬剤師が関与しており、共著者リストに薬剤師の名前を頻繁に目にする。

 2つ目は、アメリカ心不全団体(Heart Failure Society of American)とアメリカ医療薬学会の循環器薬剤師専門グループによる合同指針である。2

この指針では、1. 入院患者医療における薬剤師の役割、2. 外来患者医療における薬剤師の役割、3. 患者ケアの転移時における 薬剤師の役割、4. 人工心臓や心臓移植医療における薬剤師の役割について示している。入院患者における薬剤師の関与は認識されているが、外来患者における循環器薬剤師の関与は今後さらに発展すると考えられる。現状では、高血圧や脂質異常症に加えて、心不全や急性冠症候群患者における薬物治療の最適化を薬剤師主導の外来クリニックで行う病院も増えてきている。さらに、注目すべき点は、臨床アウトカム研究が行われ、薬剤師の関与が治療アウトカムに及ぼす影響について調査されている事である。例えば、12個の試験を集めたメタアナリシスにおいて、心不全患者における薬剤師の関与は、有意に再入院率を低下させるという結果が示されている。3 このように、薬剤師の役割をエビデンスで示すことも、地位向上に役立つと考えられる。

 循環器薬物治療が複雑になっている中、アメリカの循環器薬剤師の役割は多岐に及ぶ。循環器専門薬剤師認定制度の設立、循環器医療団体の循環器薬剤師業務に関する指針を活用することにより、今後さらに循環器医療における薬剤師の関与や地位向上が期待される。

参考文献

  1. Dunn SP, Birtcher KK, Beavers CJ, et al. The role of the clinical pharmacist in the care of patients with cardiovascular disease. J Am Coll Cardiol. 2015;66:2129-39.
  2. Milfred-Laforest SK, Chow SL, Didomenico RJ, et al. Clinical pharmacy services in heart failure: an opinion paper from the Heart Failure Society of America and American College of Clinical Pharmacy Cardiology Practice and Research Network. J Cardiac Fail. 2013;19:354-369.
  3. Koshman SL, Charrois TL, Simpson SH, et al. Pharmacist care of patients with heart failure. A systematic review of randomized trials. Arch Intern Med. 2008;168:687-94.

2019/05/27

第156回コラム「北欧の医療情報ネットワークと薬剤師業務」

                                  錦織 淳美

 2019年1月にスウェーデンとデンマークを訪れ、北欧の医療システムについて研修する機会を得たので紹介したい。

 スウェーデンではウプサラ大学病院(Uppsala University Hospital, https://www.akademiska.se/en)を訪問し、病院薬剤師業務および医療情報ネットワークシステムについて学ぶ機会を得た。スウェーデンは人口1,022万人(2018年11月)の国で、その中で薬剤師は国民1000人あたり0.8人(日本は1000人あたり1.6人)の割合で医療に従事している。薬学部は全土で2校である。1) そのうちの1校であるウプサラ大学薬学部はスウェーデン国内でもいち早く医療薬学教育を開始した背景もあり、同大学病院薬剤部でも2002年頃より病棟への薬剤師配置を開始、2004年より常駐、2017年にはウプサラ大学病院の病床数940床に対し20名の薬剤師を病棟配置させ、活発な病棟業務を展開している。病棟業務や医療チーム内での薬剤師の活躍は日本より数年遅れている印象ではあるが、ここ数年で急速に業務内容が発展している様子が伺えた。一方、日本が参考にすべき医療政策としては、国民IDと医療情報の紐付けがされている医療情報システムが挙げられる。薬歴や既往歴を含む患者医療情報は、スウェーデンのeHealth システム(日本でいう地域医療ネットワークの全国版のようなもの)により整備されており、病院薬剤師はその基本情報から病院の電子カルテへ必要な情報を転記・薬歴確認をし、更に退院時処方についても再転記を行っている。それにより地域薬局でも病院薬剤師が修正した最新のeHealth システム上の薬歴を確認しながらの調剤が可能である。また、日本の平均入院期間が18日間であるのに対して、スウェーデンでの平均入院期間は4~5日間との統計があるが、実際伺ってみると、手術日当日入院は勿論のこと、救急医療でもトリアージを行いながら医学的見地から救急患者を優先する徹底した医療体制であり、軽症患者の待ち時間は十数時間に及ぶこともあると知った。一方、薬局では薬剤師が年に4回までリフィル調剤が行えること、一包化は専門薬局が一元管理を行い郵送にて患者宅に届けられること、また後発品優先の調剤が行われ、患者が先発品を希望した場合の差額は患者負担となることなど、医療費削減に対する効率よい医療体制が整備されていると感じた。

 デンマークではコペンハーゲン大学薬学部社会医療薬学教室(University of Copenhagen, https://pharmacy.ku.dk/)を訪問し、教授および病院薬剤師の社会人大学院生とデンマークの病院・薬局薬剤師の連携および医療情報ネットワークシステムについて情報交換を行った。デンマークには薬学部が2校あり、そのうちの1校であるコペンハーゲン大学薬学部の卒業生はその7割が製薬企業へ就職し、薬局へは10~15%、そして病院へは5%程度が入職するとのことであった。病院薬剤師業務は医薬品管理・供給・製剤が中心であり、臨床業務では救急患者への初回面談を行う程度に限局されている状況がうかがえた。医療情報に関しては、薬剤情報共有システム:SMR(Shared Medication Records: デンマーク語ではFMK)が2015年1月から稼働しており、最大2年間の処方歴や処方医療機関・適応症などが検索可能とのことであった。しかしながら、病院薬剤師による病棟業務は医療現場の要請もそれほど高くないため、薬剤師がSMRを活用して薬局薬剤師と連携していく状況には至っていないことがわかった。

 2国の訪問を経て、日本が今後確立していく医療情報システムが医療施設で確実に定着している様子が伺え、今後の日本における医療情報・薬薬連携について考える良い機会となった。

参考資料)

1)今井志乃ぶ: 海外の医薬品情報が育まれる社会環境(3) スウェーデンの医薬品政策:Jpn.J.Drug Inform.,16(3) :N42~N46 【2014】

2)寺脇 大、小林大高、坂巻弘之:世界の薬剤師と薬事制度、ムイスリ出版

 

2019/04/30

第155回コラム「多職種回診における薬剤師のふるまい」

                                                  前田 幹広, Pharm.D.

 近年、回診を薬剤師を含む多職種チームで行う病院が増えてきていると感じます。米国のレジデンシープログラムにおいても、薬剤師レジデント(以下、レジデント)は多くの実習ローテーションで多職種回診に参加し、薬物治療的介入を行うことに時間を割いていました。世界的にみても、伝統的な回診では下級医が上級医に症例をプレゼンテーション(以下、プレゼン)し、他の医学生や看護師が聞いているという、いわゆる「白い巨塔」のような大名行列でした1。現在では回診の目的は表1のように多岐にわたっているため、一言で「回診」といっても目的別に様々な形が存在します。本コラムでは、それぞれの患者の状態や計画の共有を目的とする、医師・看護師・薬剤師・理学療法士・臨床工学技士等から成る多職種回診での「薬剤師のふるまい」についてお話します。

1. 病棟回診の目的1

  • 病歴・身体所見の妥当性を確認する
  • 診断を再確認する
  • 予後を共有する
  • 治療計画をたてる
  • 退院計画をたてる
  • 多職種間のコミュニケーションをとる
  • コストの解析を行う
  • 患者の優先順位 を設定する
  • 患者とコミュニケーションをとる
  • 家族や親類とコミュニケーションをとる
  • 医療従事者の教育を行う 

 薬剤師にとって、回診はただ参加して医師の計画を聞くことが目的ではなく、薬剤師の視点を加えた治療計画を共有することが一つの目的のため、多職種回診が開始する前に、自分が担当している患者の情報を確認し、薬剤師としての治療計画を立てておくべきです。筆者がレジデントの時は、Pre-round(回診の準備)を指導薬剤師と行い、患者の状態を簡潔に言う「1行プレゼン」と回診で行う介入を、指導薬剤師にプレゼンすることが求められました。 集中治療室の患者20人に対してそれらの準備を行うことは容易ではなく、回診の2時間前には病棟に行って準備をしていました。指導薬剤師がいない今でも、回診前に患者一人一人のベッドサイドへ行き、投与している薬の種類や速度、患者の表情、尿の色など自分の目でしか見られない情報を収集し、当日の薬物治療を再度考えることをルーチンとしています。

 多職種回診でのふるまいで指導薬剤師に言われた最初のことは、立ち位置です。多職種回診は10人以上と人数が多いこともあり、後ろに立っていると機器の音などで議論していることが完全に聞こえません。そのため、プレゼンする医師の近くあるいは上級医の近くに立つべきであると教えられました。プレゼンの流れを把握しないと、薬剤師からの介入のタイミングを図ることが困難となります。集中治療室では、器官系統別評価でプレゼンを行うことが一般的なため、自分が行いたい介入が抗菌薬の投与量であれば「感染」や「腎・泌尿器系」のプレゼンの際に介入を行うと、プレゼンの流れを遮らずに済みます。薬剤師による介入は、上級医と共有したいことと、下級医に対してのみ行うことと分けておき、単なる薬の出し忘れなどのミスを回診中に言う必要はありません。

 質問には可能な限りその場で答えられるように、iPadなどに診療ガイドラインや医薬品情報を整理しておくことをお勧めします。その場での答えによっては、チームの治療方針が大きく異なることもあるため、回診中の情報共有は重要です。もちろん曖昧な回答は余計チームの方針を混乱させるため、曖昧なことは薬剤部へ戻って調べたり、先輩に聞いたりして根拠を持って回答することが求められます。

 回診でのふるまいには、結局準備が最も重要となります。介入するにも質問に答えるのにもすべては準備です。準備ができていないと、回診の中でプレゼン者や上級医のそばに立つことも憚られるでしょう。あとは、タイミングと「勇気」です。若手の薬剤師によく伝えますが、筆者も回診での介入に緊張します。ぜひ試してみてください。

  1. O'Hare JA. Anatomy of the ward round. Eur J Intern Med. 2008 Jul;19(5):309-13.

 

2019/03/11

第154回コラム「特定機能病院における未承認・適応外使用医薬品の管理について」

上田 彩

2016年に医療法施行規則改定に伴い、特定機能病院の条件に未承認・適応外使用医薬品・医療機器の院内ガバナンスを徹底することが要件となった。(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000138716.pdf

 聖マリアンナ医科大学病院において、従来は同大学倫理委員会において未承認・適応外使用について審査され、使用されてきたが、2017年度より病院の医療安全管理室の下部組織として、未承認新規医薬品・医療機器担当部門が設置された。部門長は医薬品安全管理責任者である薬剤部長であり、庶務担当を薬剤部医薬品情報室が担っている。未承認新規医薬品・医療機器を使用する際には部門の依頼を受けた評価委員会(複数の医師と医療安全薬剤師等で構成される)にて審議される。全患者の経過の把握等を行なっている。適応外使用医薬品については、当院での管理体制を表1の通り行なっている「1.pdf」をダウンロード。この管理体制については、オーストラリアにおけるGuiding Principles for the quality use of off-label medicines November 2013を参考にした。http://www.catag.org.au/wp-content/uploads/2012/08/OKA9963-CATAG-Rethinking-Medicines-Decision-Making-final1.pdf

 適応外使用する条件として、疾患の重篤性、医療上の有用性があることを前提としている。これらは厚生労働省の医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において医療上の必要性を評価する基準となっている。https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000476342.pdf

 適応外使用医薬品の把握は主に病棟担当薬剤師の業務であり、事例毎に医薬品情報室と協働し、適応外使用を分類する。審査が必要な薬剤については、医薬品情報課から診療科に申請を依頼し、医薬品安全管理責任者が審査を行なっている。エビデンスレベルの低い適応外使用については、大学の倫理委員会での審議を依頼している。適応外使用医薬品を使用する際には、原則、事前に患者への説明と同意書の取得を医師より行うことが求められていることも重要な点である。

禁忌事例については、原則使用することはないが、臨床上使用せざるをえない禁忌事例については診療科と薬剤部で調査を行い、「絶対禁忌」、「相対禁忌」、「科学的根拠が乏しいと考えられる禁忌」の3カテゴリーに分類し管理を行なっている。

 当院での未承認等医薬品の管理が運用され、医療安全の観点からの医療従事者における意識改革が行われた。必要な事例については、科学的根拠を議論し、最善の選択肢を検討する。適応外使用については、評価事例を蓄積することで、迅速に対応することができ、現場での混乱を避け、院内のガバナンスを徹底することに貢献していると考える。

 

参考文献

1. 上田彩他 適応外使用医薬品の管理と評価 ポスター発表 27回日本医療薬学会年会、2017113-5日、幕張

2. 北山知里、上田彩他 当院の適応外使用医薬品の管理と評価について  28 回日本医療薬学会年会、2018 11 23-25日、神戸

2019/02/21

第153回コラム「情報収集力を高めるために日頃から取り組めること」

                           上塚 朋子

 薬について疑問が生じた時に、「答えが見つかりそうな本を開く」ことより「パソコンで適当なキーワードを入れて検索する」が主流になってずいぶん時間がたったように感じます。しかしながら、自分の情報収集の方法が適切なのか?ほかの人はもっと良い方法で調べているのではないか?そもそも、検索方法をしっかり教わったことなんてないし、といった漠然とした不安を抱えている人は多いのではないでしょうか?私自身も、医学情報が溢れかえっているこの時代、特にインターネット上の情報が日々更新される時代の情報収集に関して、自分の知識・スキルが完全であるとは思えません。そんな時に目に留まったのが、雑誌、総合診療1月号の特集記事、特に、飯塚病院の清田雅智先生の「教えて検索」の記事1)でした。

 「検索」という言葉を聞くと、「PubMed」「Google」などが思い浮かぶかもしれませんが、言葉の意味としては「書物・カードなどから、必要な事柄を探し出すこと(大辞林 第3版)」であり、特にインターネット上で探すことには限定されません。前述の特集の中でも、「どんな検索方法が最も有用か」という記事で、自分の探したい情報を見つけるために様々な情報源が紹介されています。この記事は医師向けに書かれていますが、薬剤師にとっても本質的には変わりはないと感じました。そこで、情報源を薬剤師にアレンジして要点をご紹介します。

 

検索に王道なし

 第一に強調されているのは、検索には王道などなく、「検索の効率化を知らないがために損をしているとは考えるべきではない」ということです。検索が下手な理由は、自分自身の知識量の不足や、情報収集の経験の少なさが大半とのことです。また、自分で情報を探すことの重要性を認めつつも、上司や同僚に質問するなど、メーリングリストなどの人的ネットワークも最良の情報源と述べられています。例えば、日本集中治療教育研究会(JSEPTIC) 薬剤師部会2のメーリングリストは一つの例でしょう。

Review articleを読んでみよう

 自分自身の知識量不足解消のために清田先生が研修医時代用いていたのは、「Washington Manual」やレジデントの・・と名の付くマニュアル類だったとのこと。2年目くらいからは「AJM(American Journal of Medicine)」のreview articleを読むようになったそうです。あえて臨床試験の原著論文を避け、review articleを選んでいたのは、原著論文は時間がかかる割には、得られる内容が少ないと感じていたからだそうです。実は、私も学生時代同じことを思っていました。批判的吟味スキルを身に付けるためにJournal Club形式で原著論文を読むことの価値を今は認めている、というのも同感です。

 ここで、薬剤師にとって有用だと考えるreview articleを種類別に具体例を添えて紹介します。

A) 疾患に関して

Tyroid Cancer (甲状腺がん)

Maria E Cabanillas, et al. Lancet. 2016, 388(10061):2783-2795.

B) 薬物治療に関して

Diuretic Treatment in Heart Failure(心不全における利尿剤治療)

David H Ellison, et al. NEJM. 2017, 377(20): 1964-1975

C) 薬剤に関して

Semaglutide: The Newest Once-weekly GLP-1 RA for Type2 Diabetes(セマグルチド:最新の2型糖尿病に対する週1回GLP-1受容体作動薬)

Rhianna M Tuchscherer, et al. Annals of Pharmacotherapy. 2018, 52(12): 1224-1232

D) 薬剤のトピックスに関して

Renal and Cardiac Implications of Sodium Glucose Cotransporter2(SGLT2) Inhibitors: The State of the ScienceSGLT2阻害薬の腎臓・心臓への影響 最先端の科学)

Joseph E Cruz, et al. Annals of Pharmacotherapy. 2018, 52(12): 1238-1249

  A)B)のタイプは、まれな疾患やガイドラインが最近変更された場合には、教科書よりも参考になる場合が多いでしょう。C)のタイプは、関連する非臨床/臨床試験の要点がまとめられています。副作用や薬物動態学的なデータは添付文書に書かれているデータ一覧より一歩踏みこんだ解釈が書かれていることも多く、理解に役立ちます。現在進行中の臨床試験の状況も書かれており、現在不足している情報が何か、それらはいつ頃明らかになる見込みかなどを知ることもできます。C)の論文で「Relevance to Patient Care and Clinical Practice」という小見出しでまとめられているように、薬剤師が臨床で使用する際の実務的な注意点が書かれていることも有用だと感じています。D)のタイプは薬剤の副作用が代表的ですが、Special populationでの使用方法のまとめ等、薬剤師的視点での問題点に関するリサーチがされていて、その内容を短時間で入手できるといった点で価値があります。

成書の価値

 清田先生によると、指導医クラスになった時には、アクセスする文献の中身や質が変わってくるとのこと。その理由は、「自分の行っている診療そのものの妥当性」を問いたり、「最新あるいは別の治療法があるのではないか」という発想からの疑問が多くなるからだと考えておられます。これは、同じ病棟・診療科を年単位で継続して担当している薬剤師にとっても当てはまるでしょう。こんな時に重要なのは、「成書」を見直すことであり、referenceにまで戻り、背景を詳しく勉強すると、実は自分の知識が浅かったことに気づくからであると述べておられます。そもそも、良質な「成書」と認められているものは必ず記載内容にreferenceを付け、根拠を明確にしているので、referenceに戻るのが容易なのです。

 薬物治療の良質な「成書」としては、次に紹介するように数種類あり、数年単位ではありますが、継続的に改訂が重ねられています。

E) Joseph T. DiPiro, et al. Pharmacotherapy: A Pathophysiologic Approach, 10th Edition, McGraw-Hill Education

F) Caroline S. Zeind, et al. Applied Therapeutics The Clinical Use of Drugs, 11th Edition, Wolters Kluwer Health

G) Marie A. Chisholm-Burns, et al. Pharmacotherapy Principles and Practice, 5th Edition, McGraw-Hill Education

H) Cate Whittlesea, et al. Clinical Pharmacy and Therapeutics, 6th Edition, Elsevier

成書の利点は、referenceがついていること以外に、薬物治療の全体的な情報が得られることです。調べている疾患について全てを読む必要があるわけではないですが、自分が疑問に思っていることの位置付けや関連事項が自然と目に入ってくることが、疑問の解決に役立つことを経験として感じており、情報の更新が年単位であるデメリットを考慮しても、成書の価値はなくならないと信じています。上記4種類の教科書のここ十数年間の変化を追いかけている私としては、どの本も情報量が増え、厚くなっています。中には、版が大きくなって見た目が変わるなど、一部の情報をWeb上に移行している本もあります。内容に関する新しい変化としては、膨大な情報の中からも要点が押さえやすいように、「key concepts」という形で本文の記述の中でも重要な部分を区別したり、Evidence-basedの治療を推奨しているもののevidenceが不十分な事項に関しては、「clinical controversy」という形で見解が定まっていない現状を伝える記述にしたりしていることが大きな特徴だと認識しています。

最後に

 「検索」というキーワードから、あまり連想されないreview articleと成書についてご紹介しましたが、実際に 何か読んでみようと思っていただけたでしょうか?すべて英語の情報となるので、読むのは大変ですが、読んだ後に得られる充実感を考えると、自信をもってお勧めできます。ぜひ挑戦してみてください。

 

参考文献

特集 教えて検索! 膨大な医学情報を吟味・整理するスキル. 総合診療2019, 29(1)

http://www.jseptic.com/medicine/index.html(accessed on 2019.2.11)

2019/01/08

第152回コラム「ASHP MIDYEAR 2018 Clinical Meeting & Exhibitionに参加して」

岩澤 真紀子, Pharm.D., BCPS

20181226日に米国カリフォルニア州アナハイムにて行われたASHP MIDYEAR2018 Clinical Meeting & Exhibitionにて、ポスタープレゼンテーションをする機会を得ました。今回は、アメリカ薬剤師を取り巻く現状等、印象的だった内容をご紹介します。

ASHP MIDYEAR Clinical Meeting & Exhibition

ASHPAmerican Society of Health-System Pharmacists;アメリカ病院薬剤師会)は、国内外の薬剤師・テクニシャン・学生が登録する会員数約45000人の職能団体です。毎年夏と冬にMeetingが行われており、このうち12月に行われるMIDYEAR Clinical Meeting & Exhibitionは参加者2万人を超える薬剤師業界最大規模の学会です。

米国における薬剤師免許の更新制度 

過去の会員コラムでも取り上げていますが(第70回アメリカ薬剤師免許更新制度と生涯教育についてhttp://pharmd-club.cocolog-nifty.com/blog/2012/02/post-6077.html)、米国の薬剤師免許は更新制です。薬剤師免許は2年ごとに更新する必要があり、その際、更新料と生涯教育単位数を提出する必要があります。薬剤師免許の登録料は州によって異なり、カリフォルニア州は現在372ドル、将来的には500ドルを超えると噂されており、高額です。更新に必要な生涯教育単位は1年ごとに15単位、2年で合計30単位が求められており、取得した生涯教育単位はNABPNational Association of Boards of Pharmacy:連邦薬事委員会連合)のCPEモニターサービス(https://nabp.pharmacy/cpe-monitor-service/)で管理することができます。私は今回の学会中に20.25単位取得することができました。

医薬品情報業務・研究に関するセッション

 今回多く取り扱われていたトピックの一つに、オピオイドの過剰使用があります。どのように薬剤師がオピオイドの適正使用に関われるのか、という手段の一つとして、医薬品情報の活用例が挙げられていました。医薬品情報センター(DIC)の存在は、11病院あたり5.2億ドルの収支削減、45人の死者減少に関連していると報告されています。そこで、複数の教育大学のDICがネットワークDICInpharmD https://www.inpharmd.com/our_story)」を設立し、ウェブサイト、アプリ等で医療従事者の質問に対して情報提供を行い成果をあげています。InPharmDでタイムリーに医療従事者の質問に答えることにより、オピオイドの処方が27%減少したと報告されていました。日本でも医薬品情報提供にAIを活用する試みが始まっています。DICの情報を共有する動きは、国内外で益々進んでいきそうです。

新薬評価・およびジャーナルクラブ

 米国においても、薬剤師業務の拡大によるマンパワー不足の問題は深刻です。今回、従来の新薬評価は時間がかかりすぎるため、もう少し焦点を絞って活用しやすいフォーマットにしたらどうだろうかという提案が上がっていました。さらにジャーナルクラブについては、従来のチェックリストに従い文献を読むだけでは教育効果が薄く、指導薬剤師の負担も大きいため、新しいジャーナルクラブの形式を考える必要があるのではないか、という話題が上がっていました。米国の大学においても、ジャーナルクラブを授業内で行っている大学は14%に過ぎず、ジャーナルクラブの学生への教育は、実務実習における指導薬剤師に委ねられているのが現状です。新しいジャーナルクラブの形式として、Creative, Interactive, Engaging, Thought provoking, Clinically meaningfulであることが望ましいと述べられていました。今回具体例は聞けませんでしたが、今後ジャーナルクラブの新しい教育手法が提案されてくることと思います。

レジデンシーの現状

 米国ではレジデンシーが年々発展しており、2018年におけるプログラム数は2300以上、ポジション数は約4800にのぼり、過去5年間で1450ポジション(43%)増加したと報告されています。これだけ多くのポジションがあるにも関わらず、志願した学生のマッチ率(マッチシステムで決まります)は65%に過ぎず、最近では、レジデンシーの選考に漏れて1年間フェローシップに進み、次年度のレジデンシーに申し込むという、「レジデンシー浪人」も出始めているそうです。

 

 この他、臨床的な話題では、NOACに対する血液凝固検査の有効性、米国において2014年~2018年の間に発売された11種類の抗菌薬の特徴の話題等が興味深かったです。友人の米国薬剤師の間では、肥満患者における抗菌薬の使用や、バンコマイシンの投与設計をAUC/MICをもとに行うことになったため従来のプロトコールが使えなくなっていること等が話題になっており、これらに関する教育セッションは満席でした。2年毎にこの学会に参加していますが、今回は薬剤師業務、臨床知識ともに物凄く速い動きを感じ、情報をアップデートすることの大切さを感じるとともに、自分自身の勉強不足に危機感を覚えました。この学会に参加している日本人は少ないですが、世界の薬剤師業界の動きを知るためにも、機会がありましたら是非参加してみてください。

2019/01/01

新年のご挨拶

新年明けましておめでとうございます。皆様におかれましてはつつがなく新しい年をお迎えのこととお慶び申し上げます。

旧年中は、日本各地の大学での生涯教育講座、医療薬学会をはじめとする医療関係学会での講演等において、私たちの海外での経験や日本での取組みを分かち合う機会をいただきましてありがとうございました。さらに昨年は、2016年の医療薬学会年会シンポジウム「薬剤師のワーク・ライフ・バランス」において参加者の皆様にご協力いただいたアンケートを、論文の形で発表することができました。病院薬剤師のワーク・ライフ・バランスに関する数少ない論文の一つです。病院薬剤師の将来を考える上での一助となれば幸いです。

今後も日本の医療現場・教育現場のニーズに合った企画を考え、日本の大学教育・薬剤師実務の発展のために積極的に活動を行なっていく所存です。

本年もPharm.D.クラブの活動をご支援のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。

2019年元旦 代表 岩澤 真紀子

2018/12/26

第151回コラム「米国におけるファーマシーテクニシャンの役割」

ハワードめぐみ Pharm.D. Candidate 2021

私は今年の8月からNova Southeastern UniversityAdvanced Standingプログラム、1年次に在籍しています。入学前はファーマシーテクニシャンとしてクリニック内薬局に2年半ほど勤務していたため、今回はそのテクニシャン制度についてお伝えしたいと思います。

薬局関連の免許

アメリカの薬局で見かける職業には主に4つあります。ファーマシーアシスタント、ファーマシーテクニシャン、ファーマシーインターン、そしてファーマシストです。

· アシスタント-免許は申請制。犯罪歴などに問題がなければ、誰でも取得できます。

· テクニシャン-州によりますが、264時間のインターンシップを含む約1年間のプログラムを修了後、試験に合格して取得。

· インターン-薬学生が実習をしたり働いたりするために必要な免許。Pharm.D.課程に在籍していることが取得の条件。

· ファーマシスト-薬剤師。4年間のPharm.D.課程を卒業後、試験に合格して免許取得。

アシスタントは一番職能が限られており給与も低く、下方に行くにつれ職能が拡大し給与も反映されて高くなります。州や労働条件にももちろんよるのですが、2018年現在の時給で、アシスタントが$14(約1540円)、テクニシャン$15(約1650円)、ファーマシスト$55(約6060円)程度が平均になっています。

(参考 https://www.ziprecruiter.com/Salaries/How-Much-Does-a-Pharmacist-Make-an-Hour

ファーマシーテクニシャンの職能

テクニシャンは基本的に、高度な専門知識を必要としない業務をすべて担当します。処方箋の受け取り、調剤、電話応対、会計や薬の受け渡し、専門知識を必要としない問い合わせ、液剤や軟膏の調製、点滴の混注などです。アシスタントはテクニシャンより業務内容が限られるため、勤務人数は少なく、在庫管理や電話対応などを担当することが多いです。

テクニシャンにはできない業務には、最終監査、電話での処方せんの受け取り、薬局間の処方箋の移動、患者カウンセリングがあります。この職能の違いに対しては学校で徹底的に教えこまれ、例えば市販薬が何に対して使われるものか、1回1錠など飲み方を説明するのはラベルに書いてあることを読んでいるだけなので、テクニシャンでも可能です。一方、飲み合わせや症状に対するおすすめの薬などは、たとえ知識があって答えが分かっていようとも、テクニシャンは答えてはいけません。

薬剤師に求められること

薬剤師の職能の一つに、テクニシャン・アシスタントを監督することが含まれます。最終的に薬剤師が責任を負うため、監督できるテクニシャンの数は決まっており、州や薬局の種類によって多少違ってきますが、薬剤師1人に対しテクニシャン4~6人程度が平均です。そのため、リーダーシップは薬剤師の必須スキルとなります。薬剤師はテクニシャンが行う業務はすべて行うことができますが、逆はできません。良かれと思ってテクニシャン業務を手伝ったためにカウンセリングが滞り、患者さんを待たせることになってしまう、といったことも起こり得るため、効率良く、かつテクニシャンにも気持ちよく働いてもらえるようコミュニケーションをとっていくことが必要です。

日本におけるテクニシャン制度の応用

日本で病院薬剤師をしていたとき、薬局専用クラークがおり病棟業務や薬局業務を手伝ってもらっていたのですが、注射の混注や薬品鑑別などを頼む訳にはいかず、結局一番時間のかかるところは薬剤師がやらざるを得ない、という状況でした。日本では特に粉薬や一包化調剤など時間のかかる業務が多いですから、制度として確立されれば薬剤師がより専門的な業務に専念できるのではないかと思います。

2018/12/15

「社会薬学 37巻2号」への論文掲載のお知らせ

2016年の日本医療薬学会シンポジウム「薬剤師のワーク・ライフ・マネジメントを推進しよう」にてアンケート調査を行った結果が、「社会薬学」に掲載されました。

https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jjsp/-char/ja/

論文タイトルは、「薬剤師のワーク・ライフ・バランスに関するアンケート調査」です。

シンポジウムにて、アンケート調査にご協力いただいた皆様に厚く御礼申し上げます。

病院薬剤師のワーク・ライフ・バランスに関する数少ない日本語論文の一つです。是非ご覧ください。

2018/11/30

第150回コラム「論文投稿者はハゲタカジャーナルにご注意を!」

                       中川 直人

 20185月にアメリカで開催された国際学会でポスター発表をする機会が得られました。Pharm.D.プログラムを卒業したのが2010年ですので、8年ぶりにアメリカに行くことになりました。その際に、Pharm.D.プログラムでお世話になった恩師もその国際学会でポスター発表すると伺っており、8年ぶりに再会を果たしました。その時に恩師から初めて聞いた話を今回取り上げます。

“Predatory Journals!”(ハゲタカジャーナル)

 学会会場で恩師に論文投稿先を相談した時です。私は、オンラインジャーナルに投稿しようと考えていることを伝えました。すると、恩師はすかさず「Predatory Journalsを知っているかしら?」と問い返してきました。初めて聞いた言葉でした。最初はうまく聞き取れなかったので、恩師は紙に書いてこのスペルを私に見せてくれました。-”Predatory Journals” 恩師の説明を聞いていると、要するに、あくどいオンラインジャーナルがあるということでした。ある分野に関するオンラインジャーナルを検索してみると、様々な国で運用しているものがたくさんあります。Predatory Journals(ハゲタカジャーナル)は、研究者にメールを送り、迅速な掲載ができると誘いますが、実際は編集委員会もなく、査読を経ずに掲載し、その引き換えとして、論文著者が数万円の掲載料を支払うよう求めます。恩師の大学のある教員は、実績を上げたいために様々なオンラインジャーナルに投稿していたそうですが、すべてpredatory journalsであることがわかり、実績ゼロになってしまったと恩師は言っていました。恐ろしい話です。

 以下にpredatory journalsと認定されているサイトのURLをお示しします。論文投稿をする前に、その雑誌がpredatory journalsとして認定されていないか確認したほうがよいと思います。

https://beallslist.weebly.com/ 

2018/10/31

第149回コラム「『死ぬ権利』法案」

大友 千絵子

普段がん専門薬剤師として仕事をしている私は、がん薬物治療をしている患者さんとばかり携わっています。化学療法を何サイクルも受け、癌が進行しているのが見つかり、次の化学療法へ進むー。そういうがん治療真っ最中の患者さんたちです。年齢や既往歴、患者さんの全身状態(ECOG: PS(Performance Status))によって、次の治療法は大きく左右されます。

仕事をしている中でEnd of Life Option(死ぬ権利)を求めて、診察に来た患者さんのケースに携わることがありました。アメリカの法律は州によって異なります。現在、アメリカ国内で『死ぬ権利』が合法である州は1990年代に合法化されたオレゴン州を初めとし、ワシントン州(2008年)、バーモント州(2013年)、コロラド州(2016年)、カリフォルニア州(2016年)、コロンビア特別区(2017年、首都ワシントンDCの所在地)、ハワイ州(2019年より合法化)のみです。好んで死を選ぶ人は誰もいないでしょう。がんやその他の病気を好んで選ぶ人もいないでしょう。

病気で何年も苦しみ、基本的な自分のお世話や生活が出来ないことで個人の尊厳を奪われたと思う人も多くいます。

カリフォルニア州の『死ぬ権利』法案では、その権利を施行する患者条件を以下のように定めています。

  • 18歳以上であること
  • カリフォルニア州在住であること
  • 担当医が患者が不治の病が終末期であり6か月未満の死が予想されることを診断
  • 患者自身が治療方針の意思判断を明確にできる能力があること
  • 他人からの影響を受けずに安楽死・尊厳死の薬剤処方を願い出ること
  • 自身で安楽死・尊厳死の薬剤を服用できること

条件を満たした患者さんが安楽死・尊厳死の薬剤を受け取るにあたり、担当医と患者さんは数段階の過程を経ることになります。

1.患者本人が担当医へ口頭で2度『死ぬ権利』の意思表示をすること。1度目と2度目はすくなくとも15日間期間があいていること。

2.患者本人が少なくとも一度は書面で『死ぬ権利』の意思表示をすること。

3.患者本人が、ほかの誰の立ち合いもなく(通訳者は除く)、担当医と話し合いをし、『死ぬ権利』の意思表示が自身の意志であることを明確にすること

4.患者本人が2人目の医師であるコンサルティング医師の診察を受け、診断、予後に間違いがなく、患者本人に治療方針の決断能力があることを再確認すること

  医師と患者間で以下の事項の話し合いが行われることが『死ぬ権利』法案で義務付けられています。

1.安楽死・尊厳死の薬剤がどのように患者の体へ影響を及ぼすか、即時に死ぬわけではないということ

2.現実的な代替案(緩和ケア、ホスピス、疼痛緩和など)

3.患者自身が『死ぬ権利』の要望を取り下げたいかどうか

4.安楽死・尊厳死の薬剤服用時に近親者へ報告するか否か、もしくは誰かに立ち会ってもらうか否か、ホスピスプログラムに参加するか否か(患者は上記のいずれかを選択する義務はない)

5.安楽死・尊厳死の薬剤服用を公共の場で行わないこと

また医師は患者が安楽死・尊厳死の薬剤を処方された後、必ず服用しなくてはいけないわけではないことも伝え、確認しなくてはいけません。

すべての条件が整ったうえで、担当医は安楽死・尊厳死の薬剤を処方します。どの薬剤が処方されるかはこの『死ぬ権利』法案では特定していません。安楽死・尊厳死の薬剤の処方は直接患者さんに薬剤を渡すか、『死ぬ権利』法案に参加している薬局に直接処方箋を送るかです。患者へ直接処方箋を渡すことは法律で禁じられています。

 

【患者ケース1】

74歳男性。2016年に左足の脂肪肉腫発症。PETスキャンの結果次第では、仮に多臓器への転移が見られない場合は手術の方向で治療方針を決める予定であったが、患者がPETスキャンを拒否。患者は代替医療を決断。2年後の2018年に 患者本人が病院へ連絡。PETスキャンにて多臓器転移が見られないことを確認。がん専門医が手術を勧めるも患者は手術を拒否。

診断の結果、患者の予後は6ヵ月以上であると判断され、患者の要望は却下。

【患者ケース2】63歳男性。2017年胆管がん発症。化学療法を11サイクル投与。2018年、CTスキャンの結果、胆管がんの進行が認められる。

化学療法のオプションもあるなか、『死ぬ権利」法案に基づき、受診。20189月が2度目の口頭リクエスト。

奥さんと成人した子供達とも話し合い、家族も患者の意思を尊重している模様。

担当医により、患者は条件を満たしていると判断され、薬剤が処方された。

 

薬剤を処方されても、服用するかしないかは患者の自由です。1026日現在、この患者はまだ薬剤を服用していない模様です。服用後は通常数分から2-3時間で死に至りますが、まれに数時間かかることもあるそうです。では、2017年一年間の間でこの『死ぬ権利』法案を活用した患者は一体どれくらいいたのでしょうか?報告によりますと、632人がこの法案を活用し、そのうち577人が、安楽死・尊厳死の薬剤の処方を受けています。2017年に安楽死・尊厳死の薬剤服用により死亡したのは合計374人です。(2016年に処方された分を含む)374人中256人が終末期のがん患者さんでした。その他の病気は、神経系の病気、心疾患、慢性呼吸器系の病気、脳血管疾患などでした。

  人間はいずれ必ず死にます。年齢を重ねれば、今まで出来ていたことが難しくなったりします。病気をすればなおさらです。

尊厳死、安楽死、自殺ほう助など様々な呼び方がありますが、カリフォルニア州で『死ぬ権利』が法律として成り立ち、実際にこの法律を使って死を選ぶ人たちがいるということをご紹介させていただきました。

参照文献

1https://coalitionccc.org/tools-resources/end-of-life-option-act/ (accessed on October 27th, 2018)

2. https://www.cdph.ca.gov/Programs/CHSI/CDPH%20Document%20Library/2017EOLADataReport.pdf(Accessed on October 27th, 2018)

 

2018/09/30

第148回コラム「Western大学でのEBM教育」

横田 麻衣 Pharm.D. Candidate 2020

私は昨年日本の薬学部を卒業し、Western大学のIBPBプログラム1に入学して現在3年次に在籍しています。今回は、アメリカに来て驚いたことの一つ、「Evidences Based Medicine教育」について紹介させていただきます。

【日本で薬学生だった頃のEBMの印象】

日本で薬学生だった頃、初めて『根拠に基づく治療』と聞いた時に大きな使命感に心が躍ったことを覚えています。EBMの授業を通して1~3次資料、研究の種類から生物統計のt試験やp値などを習いました。お恥ずかしいことに論文の読み方を知らなかった私は、習った知識を実際にどのように使うのかわからず、大切な知識を磨かず『石ころ』にしてしまい、あの時に感じた使命感は国家試験の勉強に埋もれてしまっていました。

Western大学のEBM教育】

Western大学1年次は免疫学、有機化学など基礎内容が中心ですが、2年次になると授業内容が一気に治療学に変わります。その一番最初のブロック*2が「EBM」です。学ぶ内容は日本の薬学教育モデル・コアカリキュラム*3とほぼ同じです。EBM の基本概念と実践のプロセスについて説明できる。

1. 代表的な臨床研究法(ランダム化比較試験、コホート研究、ケースコントロール研究など)の長所と短所を挙げ、それらのエビデンスレベルについて概説できる。

2. 臨床研究論文の批判的吟味に必要な基本的項目を列挙し、内的妥当性(研究結果の正確度や再現性)と外的妥当性(研究結果の一般化の可能性)について概説できる。

3. メタアナリシスの概念を理解し、結果を説明できる。

日本の教育との違いを感じたのは、実践練習がしっかりと組み込まれているところです。特に『批判的吟味』の練習は以下の過程を使用し、毎日のチーム課題を通して身につけていきます。

 Ask:質問や問題の種類を考える

 Acquire:問題に合った情報を手に入れる

 Appraise:手に入れた情報を評価する

 Apply:評価した上で情報を症例に使用できるか検討する

 Act:症例(患者さん)において実践する

この過程には上に記載した日本SBO14が全て含まれています。この中で特に集中して行うのが②Acquireと③Appraiseです。

Acquire

現在の患者さんからの質問・問題の種類から、どの情報がより良いのかを考えます。Background Question(薬や病態などの一般的な質問)とForeground Question(各患者に個別化された質問)それぞれにおいて使用する情報も異なってきます。最初は加工度の高い資料(3次資料)から使用し、加工度の低い資料(1次資料)へと掘り下げいきます。例えば、「心房細動とは何か?」というのがBackground Questionであり、3次資料情報源としてはUpToDateDynamedを使います。一方、「心房細動を罹患している患者において、ワーファリンとリバロキサバンどちらが効果的か?」というのがForeground Questionであり、3次資料情報源としてMicromedexLexicompで薬について調べた後にPubMedで論文検索をします。また、研究の種類、outcomeinclusion/exclusion criteriaなど、見つけた論文の種類が現在の問題に対して妥当かを吟味します。

Appraise

見つけ出した論文の信用性を批判的に確認します。この確認項目は研究の種類によって異なっていますが、バイアスの有無やサンプルに偏りがないかだけではなく、outcomeの種類なども考え、論文にかかれた結論に自身の結論を加えます。

 毎回の課題では、これら全ての情報をCATCritically Appraised Topicsというテンプレート1枚にまとめ、提出します。CATとは、Inclusion criteriaExclusion criteria、薬物投与群とコントロール群、各確認項目の評価*、アウトカムのデータなど、論文を端的にまとめたものです。また、現在の問題点(Clinical Question)も記入することで、論文との比較ができるようになっています。EBMブロックが終わった後にもブロック毎に症例のEBMプレゼンテーション課題が組み込まれたおり、様々な分野でのEBM練習ができるようになっています。

*各項目の確認は論文の種類によって異なり、バイアスの大きさを記入します。例えばランダム試験では以下のようになります。

l Follow up

l Randomization and concealment

l Intention to Treat  

l Similar baseline

l Blinding

l Equal treatment

【最後に】

治療を進めていく上で、『根拠はなにか?』と聞かれることが多い反面、しっかりとした根拠が無いことも多々あります。そのような時に、情報の解析の方法と、その情報をどのようにして個々の患者さんに使用していくかを判断する能力が大切です。その基礎となるのが「EBM」であると、4年前に感じた使命感が再び蘇りました。最初は石ころになってしまっても、磨けば輝きが生まれ、自身の薬学のキャリアも光を増し、患者さんへの治療にも還元できる。この楽しさをもっとたくさんの領域でみなさんと共有できたらと思っています。

 

注釈

 

1. IPBPInternational Post Baccalaureate PharmD)プログラム

 

https://www.westernu.edu/pharmacy/pharmacy-academics/pharmacy-ipbp_about/

 

2. Block Plan制度

 

Western大学では、学期制度の代わりにBlock Plan制度が導入されています。Block Plan制度とは、1ヵ月を1ブロックとして1つの疾患を学びます。例として、2年次秋のカリキュラムは以下のようになっております。

 

8月:EBM

 

9月:腎疾患

 

10月:メタボリックシンドローム:高血圧・脂質異常症・糖尿病

 

11月:心疾患

 

12月:12年次の総まとめ

 

3. 文部科学省『薬学教育モデル・コアカリキュラム平成25年改訂版』http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2015/02/12/1355030_02.pdf (20188月アクセス) 

 

2018/08/27

第147回コラム「Pharm.D.取得後の薬剤師試験(NAPLEX/MPJE)について」

磯 友菜

 アメリカでPharm.D.プログラムを終えた場合、薬剤師として登録されるためにはほとんどの州でNAPLEXNorth American Pharmacist Licensure Examination)という実践薬学の知識を測る試験と、MPJEMultistate Pharmacy Jurisprudence Examination)という各州の法律の試験を受けなければなりません。これは日本の薬剤師国家試験に当たるものです。海外の薬学部を卒業していてPharm.D.プログラムに行かない場合、FPGECForeign Pharmacy Graduate Equivalency Examination)に合格してから州で定められた時間の実務研修を行い、NAPLEXMPJEを受験する方法もあります。

NAPLEX/MPJEは、日本のように1年に1回、一斉に試験を受けるのではなく、Pharm.D.プログラムを卒業後に自分でスケジュールを決めて受験します。Pearson VUE という様々なコンピューターベースの試験を請け負っている会社の施設から選択し、年間を通して自分の好きな時に受験することができます。(このPearson VUEは、日本でも、TOEFLGREなどの試験を受ける時に使われている会社です。)ただし、一度不合格になると、再度受験するまでNAPLEX45日間、MPJE30日間の期間を開ける必要があり、5回まで(1年間には3回まで)しか受験できません。 

NAPLEXはエントリーレベルの薬剤師として必要な知識や技術に関する問題が250問出題され、6時間(プラス10分の休憩2回)かけて受験します。250問中200問はスコアに換算されますが、50問はプリテストとして使用されます。プリテストとは、その問題を将来の試験に含めることが適切かどうかを評価するための問題で、スコアには反映されません。全体的に分散して配置されているため、受験者にはどの問題がプリテストか判別できないようになっています。200問の獲得スコアは0点から150点に換算され、75点以上で合格になります。MPJE120問出題され、20問がプリテストで、2時間半かけて受験します。スコアは0点から100点で、75点以上で合格になります。

NAPLEXのほとんどの問題はシナリオベース形式で、患者のプロファイル・薬歴・病状の経過が提示され、そこから患者の病態をアセスメントし、薬剤による副作用や禁忌、相互作用などが聞かれる基礎問題や、適切な薬物治療などの選択をする問題などが出題されます。適切な薬剤を選ぶためには、最新のガイドラインに沿った治療目標(検査値や治療期間)や、推奨されている第一選択薬、並存症がある場合に優先される治療薬、副作用やアレルギーがあった場合の代替治療などを把握している必要があります。問題は一般名だけでなく商品名でも出題されるため、主な薬品の商品名を把握している必要もあります。

 

 以下は、公表されているNAPLEXの出題分野です。

エリア1:安全で効果的な薬物療法と健康状態に対する成果の確保(約67%)

· 患者情報の取得、解釈、評価:治療記録、検査所見、症状、危険因子など

· 個々の治療計画の作成と実施:薬剤独特の副作用、禁忌、相互作用、薬剤の重複や必要な薬剤の欠落の確認、セルフケアなど

· 個別化された治療計画の評価と修正:治療目標やその結果、安全性・有効性など

· 個別化された治療計画の効果的なコミュニケーションや文書化の技術

· 個人および集団(地域住民)の健康と安全の推奨:文献の評価、参考文献の選択、投薬エラーの評価やその対策など

エリア2:医薬品の安全で正確な調製、調剤、投薬、管理と提供(約33%)

· 計算問題:薬物濃度、調剤に必要な投与量・速度、静脈栄養のカロリー計算など

· 滅菌・非滅菌製剤:調製に必要な施設の条件、調製の手順、混合物の特性など

· 医薬品の調剤、管理:医薬品の包装、表示、保管、取扱いおよび廃棄など

 

PharmDプログラムを通して学んだことは、臨床に即した内容がほとんどで、これは薬剤師試験を通しても見られる傾向だと思います。卒業後にすぐに薬剤師として働くことを、学生、教員、薬剤師の認定機関も意識しているように感じます。

 

Reference

1. Nabp.pharmacy. https://nabp.pharmacy/wp-content/uploads/2018/05/NAPLEX-MPJE-Bulletin-May-14-2018.pdf. Published 2018. Accessed July 28, 2018.

2. Nabp.pharmacy.NAPLEX/MPJE Bulletin. https://nabp.pharmacy/wp-content/uploads/2018/05/NAPLEX-MPJE-Bulletin-May-14-2018.pdf. Published 2018. Accessed July 28, 2018.

3. Pharmacy F. Florida Board of Pharmacy- Licensing, Renewals & Information. Floridaspharmacy.gov. http://www.floridaspharmacy.gov. Published 2018. Accessed July 28, 2018.

4. Computer-Based Test (CBT) development and delivery: Pearson VUE. Home.pearsonvue.com. https://home.pearsonvue.com. Published 2018. Accessed July 28, 2018.

«第146回コラム「ポリファーマシーと包括的な薬物治療の見直し(Comprehensive medication reviews / Clinical medication reviews : CMR)*」

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