生涯教育(CE)

2009/11/14

第四十三回コラム「フェローシッププログラム」

University of Kansas Department of Pharmacy Practice  山田三樹子

アメリカの薬剤師卒後教育システムは多岐にわたっており、レジデンシーと呼ばれる臨床教育に関しては、他のPharmD clubのメンバーの方がコラムで書かれていたり、今レジデンシーをされている方もいらっしゃるので、ご存知の方も多いと思います。私は、レジデンシーの中でも、ユニークなプログラムに参加しているので、今回はそれについて紹介したいと思います。

通常、12年間のレジデンシーを終えると、次のステップとしてフェローシップというプログラムがあります。レジデンシーで学んだ知識を生かして、さらに臨床での知識を深めたり、また、研究に焦点を置くこともできます。

私は今年の9月から、University of Kansasneurology(神経学)のレジデンシー/フェローシップというプログラムに参加しています。これはレジデンシーとフェローシップが組み合わされた3年間のプログラムです。通常のレジデンシーやフェローシップのプログラムと異なっている点は、1年目から神経学という分野に絞って臨床と研究の両方を始めているところです。日本で薬剤師をしているときから、私の理想の薬剤師像は、臨床と研究の両方ができるというもので、臨床の知識と科学者としての視点を常に持ち続けることは、チーム医療の中で重要なことと思っています。このプログラムを始める前は、今の上司や指導薬剤師に怒られそうな話ですが、神経学そのものに関してあまり興味がありませんでした。しかし、臨床と研究の両方ができて、研究に関してさらなる知識を深められるチャンスは滅多にありません。従って、このプログラムは私の理想の薬剤師になるためには、願ってもないプログラムだったのです。3年間の大まかなスケジュールとしては、

·         1年目:神経学の臨床経験を積む

o   神経学に関するローテーション(movement disorder, memory disorder, epilepsy, headache, neuralgiaなど)を通じて神経学全般を学ぶと同時に、以後の研究テーマを見つける

o   今後の研究に関して基礎を学び、研究計画を立てていく

·         2年目~3年目:神経学の臨床経験を積みながら、神経学に関する薬剤学、薬物動態学などの観点から研究を進めていく

臨床の場では、薬学部の学生を指導する立場でもあります。

3年間は長いように思えますが、上記のことを遂行していくために、臨床と研究の他に以下のプログラムに参加しなくてはなりません。

·         Teaching certificate program:学生に講義をするための基礎を学ぶ

o   プログラムの一環として、薬学部の学生に講義を行う

·         Master’s of science:修士の学士を取得する

o   医学部の修士課程に行き、研究の進め方、統計学、治療学などを学ぶ

私は日本で修士課程を修了しましたが、アメリカでも修士課程に入ることで、これまで学んできたことをさらに系統立てて学びなおすことができ、また、私は統計学に関して深く学びたかったので、どんな教育を受けられるのかとても楽しみです。

9月から私が行ってきたことは、

·         病院薬剤師として働くためのトレーニング

·         てんかん治療に関する治験コーディネーターとしてのトレーニング

·         てんかん外来への参加

·         老人医療のローテーション

o   パーキンソン病、アルツハイマー病、その他老人医療に関して、薬物治療に関わること全般

·         研究テーマに関する基礎的な見解を得る

·         Research 101という授業への参加

o   研究を始めるにあたって、どこから財源を得るか、研究申請書の書き方など

プログラムが始まって間もない頃、私がてんかん治療に関する治験のコーディネーターをしなければならないことを知らされました。日本でもやったことがなく、不安ばかりが募っていました。しかし、上司からは、この経験を楽しむように言われました。私がこの治験に参加する目的は、治験を通して、治験の進め方、薬剤師としての関わり方、医師、患者、治験事務局、製薬会社とのコミュニケーションの取り方、さまざまな申請書の書き方を学ぶことです。実際、戸惑うことも多いですが、関わっているすべての人がしっかりと私をサポートしてくれているのでありがたいです。

実は、このプログラムは今年始まったばかりのプログラムです。このコラムと通して、実際に私がやっていることを皆さんにお知らせしていければと思っています。

2009/10/15

第四十二回コラム「老人における不眠症‐睡眠衛生とOTC薬物治療‐」

                         畔田 名穂子, Pharm.D. , M.S.

不眠症とは「眠りに落ちにくい、もしくは睡眠を持続できないために十分な休養を与える睡眠が得られない疾患」と定義されている(1、。一般的にこれが1ヶ月以上続き、日中に倦怠感、意欲低下、集中力低下、食欲低下などの不調が出現する。睡眠の量と質の変化は加齢に関連しており(3)Subramanian(4)らは50%以上の老人が入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒、睡眠障害を経験していると報告している。  

また不眠症の40%もの人々がOTC市販薬やアルコール飲酒で不眠を解消しようと試みるという報告がある(5)ことから、薬剤師が不眠症の治療に大きな役割を果たすことは明らかである。ここで適切な睡眠衛生の概要を説明し、OTC睡眠補助薬の使用について述べたいと思う。

不眠症の病因

不眠症には大きく分けてPrimary Insomnia 一次性不眠症:不眠が単独の症状)とSecondary Insomnia二次性不眠症:他の病気が原因で不眠になる場合)があるさらに細かく分類すると、数日間の不眠をTransient insomnia (一過性不眠症)13週間の短期の不眠をShort-term insomnia(短期不眠症)3週間以上に及ぶ不眠をChronic insomnia(長期不眠症)という

冒頭で述べたように、睡眠の仕組みの変化は加齢に共通するものである。とくに老人は寝つきが悪くなかなか眠れない(入眠障害)、あるいは朝早く目覚めてしまい再度眠ることができない(早朝覚醒)などの症状が共通している。通常の加齢過程によって引き起こされるCircardian Rhythm(約24時間周期のリズム)の変化がその入眠障害や早朝覚醒に関わっているのである。

65歳以上の患者の不眠症の多くはComorbidity(併存疾患)身体障害、呼吸障害、薬物使用、うつ状態、環境因子<貧しい生活環境、配偶者・友人を失うこと>などに関連している(4)。抑うつ症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、心不全、甲状腺機能障害、胃食道逆流性疾患、睡眠時無呼吸、神経障害、認知症のような疾患も同じように不眠症を引き起こす要因となる。

不眠症の原因となり得る薬剤には、中枢神経興奮薬(例:痩身薬、アンフェタミン)、抗うつ薬、ステロイド剤、利尿薬、抗痙攣薬、降圧剤(例:ベータ遮断薬)などがあるこのほか、カフェイン、アルコールやニコチンも睡眠に悪影響を及ぼすものとしてよく知られてる。

治療概要

1.       非薬物療法

薬剤師が不眠症の患者にカウンセリングをするときに避けられないことは簡単な病歴インタビューを行うことである。インタビューでは特に現疾患、服用薬・栄養補助薬品、カフェイン・アルコール摂取、喫煙、そして睡眠衛生状況を確認することが重要である。もちろん根本的な不眠の要因に目を向けることは短期においても長期においても不眠症を緩和するには必要だが、適切な睡眠衛生を患者が理解することは最も重要な課題である(Table1参照)。

Table1:

良質な睡眠をとるための睡眠衛生

1.定時の起床・就寝時間を定める。

2.昼寝を避ける。

3.就寝前の喫煙、アルコール、カフェイン、中枢神経興奮薬(例:鼻腔うっ血除去薬)の摂取を避ける。

4.不眠と関連のある薬は朝に服用する(例:利尿薬、選択的セロトニン再取り込み阻害薬)。

5.規則正しい運動を習慣化する。就寝前の激しい運動は避ける。

6.睡眠環境を整える(騒音・振動をなくす、光を遮断する、適度な室温を保つ)。

7.寝室を眠る場所以外に使用しない。

8.就寝前の多量の水分摂取を控える。

9.就寝前の食事はなるべく避ける(少量の炭水化物摂取は可)。

2.       OTC薬物療法 

根本的な不眠の要因をあげ、適切な睡眠衛生の評価を行った後に、OTC睡眠補助薬の使用を考慮するべきである。しかし、老人は多剤服用をしていることが多いため,これらの薬物を薦める場合は薬物相互作用を配慮することが重要になってくる。米国で使われている主なOTC睡眠補助薬をいくつか挙げてみることにする。

·         抗ヒスタミン薬

アメリカで最も多く使われている睡眠補助薬はジフェンヒドラミンである。ジフェンヒドラミンはヒスタミン1(H1)受容体拮抗薬で抗コリン作用もある。ある二重盲検臨床試験では、ジフェンヒドラミンを就寝前3060分に12.550mg服用することが最も効果的であると報告されている(6、7)。この試験では、ジフェンヒドらミンの服用歴のない患者が最もよい睡眠効果が得られ、何人かの患者に翌日薬の残存効果が残ったと述べられている。しかし、鎮静効果と抗コリン作用が長く続くため、一般的に老人には薦められない。

老人患者がジフェンヒドラミンを服用する際の副作用は十分に理解されるべきである。混乱・困惑、鎮静、めまい、口渇、便秘、尿閉は特に多く見られる副作用といえる。また、不眠症以外に患者が抱えている疾患や患者の生活習慣を知ることも重要である。例えば、前立腺肥大症の患者においては尿閉が頻繁にみられ、またジフェンヒドラミンとアルコールの併用は中枢神経抑制効果を増大させる。睡眠補助としての抗ヒスタミン薬の使用は鎮静作用に耐性を来たす可能性もあり、注意が必要である。

·         栄養補助食品 

o   カモミール

カモミールには鎮静・痙・抗炎症作用があり、主な成分であるアピゲニンは、ベンゾジアゼピンと同じ受容体に結合するといわれている(8)。1日の経口投与量は4001600mgで、1投与量につき1.2%のアピゲニンが標準化されている。カモミールはその鎮静果のために茶の成分としてよく使われている。副作用はまれであるが、ヨモギ花粉と同様にアストイラセアエの仲間(ブタクサ、アスター、およびキク)の植物にアレルギーがある人はカモミールを使用しないほうがよいとの報告がある(9)

o   バレリアン

バレリアンは鎮静・催眠効果のある薬用植物として、その根の部分が古代から使用されている。有効成分の吉草酸はベンゾジアゼピンと同じ受容体に結合し、GABA放出の仲介をするといわれている(10、11。ある無作為化臨床試験では、バレリアンが睡眠の質をあげ、翌日の薬物残存効果がなかったと発表している(12)。このほかこの試験報告では、24週間という短期間では効果がみられず、続けて服用することでよりよい効果があるとされている。不眠症に対するバレリアンの推奨投与量は、1投与量につき300600mg0.81.2%の吉草酸)である。長期使用による副作用として、軽い動悸、不安、頭痛、興奮などが挙げられる。またバレリアンは中枢神経抑制薬に対して相加作用を持つといわれている。

o   メラトニン

メラトニンは脳の松果体から放出される内因性ホルモンであり、Circardian Rhythmに基づく睡眠障害を治療することに用いられる。特に、老人や時差ぼけの患者はメラトニンレベルが減少しているため、それを補うことにより睡眠の質と時間を改善する(13,14,15)。多くの試験では、0.13mgの低用量のメラトニンを就寝12時間前に持続的に使用しており、使用が開始された第1週目に効果がもっともはっきり現れると報告されている。

睡眠治療における薬剤師の役割

薬剤師はこれらの睡眠補助薬を薦める前に、必ず睡眠衛生とそのほかの非医学的要因や精神的要因を評価するべきである。栄養補助薬品であるカモミール、バレリアン、メラトニンを患者に薦める際には、その効果がまだ大規模なプロスペクテイブ臨床試験で支持されていないということを念頭におく必要がある。それでも患者の意向によりそれらの摂取を促すときには、今までの臨床試験で使われた投与量以内の使用を薦め、カモミールを使用する患者には、キク科の植物にアレルギーがあるかどうかを注意しなければならない。

参考文献:

1.Attarian HP. Helping patients who say they cannot sleep. Practical ways to evaluate and treat insomnia. Postgrad Med. 2000;107:127-142. 

2. Lippmann S, Mazour I, Shahab H. Insomnia: therapeutic approach. South Med J. 2001;94:866-873.

3.Dopp JM, Phillips BG. Sleep disorders. In: DiPiro JT, Talbert RL, Yee GC, et al, eds. Pharmacotherapy: A Pathophysiologic Approach. 7th ed. New York, NY: McGraw-Hill Medical; 2008:1191-1201.

4.Subramanian S, Surani S. Sleep disorders in the elderly. Geriatrics. 2007;62:10-32.

5.Sproule BA, Busto UE, Buckle C, et al. The use of non-prescription sleep products in the elderly. Int J Geriatr Psychiatry. 1999;14:851-857.

6.Kudo Y, Kurihara M. Clinical evaluation of diphenhydramine hydrochloride for the treatment of insomnia in psychiatric patients: a double-blind study. J Clin Pharmacol. 1990;30:1041-1048.

. Rickels K, Ginsberg J, Morris RJ, et al. Doxylamine succinate in insomniac family practice patients: a double-blind study. Curr Ther Res. 1984;35:532-540.

Viola H, Wasowski C, Levi de Stein M, et al. Apigenin, a component of Matricaria recutita flowers, is a central benzodiazepine receptors-ligand with anxiolytic effects. Planta Med. 1995;61:213-216.

Reider N, Sepp N, Fritsch P, et al. Anaphylaxis to chamomile: clinical features and allergen cross-reactivity. Clin Experiment Allergy 2000;30:1436–43.

10.Houghton PJ. The biological activity of Valerian and related plants. J Ethnopharmacol. 1988;22:121-142.

11. Hadley S, Petry JJ. Valerian. Am Fam Physician. 2003;67:1755-1758.

12Lindahl O, Lindwall L. Double blind study of a valerian preparation. Pharmacol Biochem Behav.1989;32:1065-1066.

13 Garfinkel D, Zisapel N, Wainstein J, Laudon M. Facilitation of benzodiazepine discontinuation by melatonin: a new clinical approach. Arch Intern Med. 1999;159:2456-2460.

14. Shamir E, Laudon M, Barak Y, et al. Melatonin improves sleep quality of patients with chronic schizophrenia. J Clin Psychiatry. 2000;61:373-377.

15. Andrade C, Srihari BS, Reddy KP, Chandramma L. Melatonin in medically ill patients with insomnia: a double-blind, placebo-controlled study. J Clin Psychiatry. 2001;62:41-45.

2009/10/03

ビタミンD サプリメント

 半田 智子,Pharm.D.

 アメリカの地域の調剤薬局では、数多くのOTC・サプリメントを取り扱っています。私が今働いている調剤薬局では、ビタミンDの不足解消とカルシウム(Caの吸収促進の目的で、かかりつけ医からビタミンDサプリメントの指示書を携えてくる患者さんがよく見受けられます。そこで今回は、アメリカの調剤薬局で頻繁に遭遇するビタミンDサプリメントについて取りあげてみたいと思います。

 ビタミンDは、ビタミンDcholecalciferolビタミンDergocalciferolの構造で存在します。ビタミンDは植物性食物から摂取できます。ビタミンDは皮膚で紫外線Bによって生成されるほか,動物性食物からの摂取も可能です。体内に入ったビタミンDは肝臓で代謝され、不活性体25-hydroxyビタミンD,25(OH)Dになり、この物質を測定してビタミンDの摂取状況を判断します。

ビタミンDレセプターはさまざまな組織に存在し、その影響は多岐にわたります。体内に取り込まれたビタミンDは腎臓にて活性体に変換され、各組織(例:前立腺、大腸、乳房)に運ばれ細胞の成長・分化を調節します。小腸と腎臓ではCaリンPの吸収を促進し、骨の成長に影響します。ビタミンDが不足すると、血管新生阻止作用が抑制され各種がん(例:脳腫瘍、前立腺がん、乳がん)やがん転移のリスクが高まります。また、高血圧、糖尿病、高中性脂肪血症、肥満との関連も示されました。そのほか、多発性硬化症にも何らかの形で関与しているのではないかと推察されています[i]

このようにビタミンDは体内で重要な役割を果たしており、十分に摂取する必要があります。一般に、ビタミンD欠乏症は25(OH)D 20ng/mL以下、不足は 2129ng/mL、正常は30ng/mL以上と定義されています。Holick[ii]、世界で100億の人がビタミンD欠乏症であると推定しています。アメリカでは健康成人の36%が、何らかの疾患を持つ成人では57%が、そしてEUではさらにそれを上回る割合の人がビタミンD不足であると報告しています。

 では、どれだけビタミンDを摂取する必要があるのでしょうか?現在アメリカでは、1950才の成人は200IU(国際単位)/日、5170才の成人では400IU/日、70才以上では600IU/日を摂取するよう推奨しています[iii]。しかし最近の研究では、成人8001000IU/日を推奨するデータも現れました。それに伴い、指示書の服用量も増加傾向にあります。しかしビタミンDは脂溶性ビタミンであることから、過剰摂取は回避しなければなりません。一般に成人のビタミンD中毒は1日あたり10,000IU以上とされており、主な症状として吐き気、嘔吐、食欲減退、脱力、臨床検査値では血清CaPの上昇が見られます。 

 薬剤師がビタミンDの指示書を受けとる際には、薬物相互作用についてチェックする必要があります。一般に、Ca血中濃度を上昇させる利尿剤、Caサプリメント、フェニトイン、ジゴキシンなどと併用するときは慎重にモニターすることが必要です。さらに、どのような人が対象なのか考慮する必要があります。尿路結石の人には結石を悪化させる恐れがあります。高齢者は十分に体内で活性ビタミンDを生成できないため、高用量服用する必要があります。

 以上まとめとして、薬局でビタミンDを求めてきた人に対しては、1)服用量、2)相互作用の確認、3)対象者の状態の確認、4)副作用症状、5)ビタミンDが多く含まれる食品を中心にお話しするように心がけています。

*ビタミンD1μg40 IU(国際単位)


[i] Stechschulte SA, Kirsner RS, Federman DG. Vitamin D: Bone and beyond, Rationale and Recommendations for supplementation. Am J Med. 2009;122:793-802.

[ii] Holick MF. Vitamin D Deficiency. N Engl J Med. 2007;357:266-281.

[iii] Office of Dietary Supplements national Institutes of Health. Dietary Supplement Facts Sheet Vitamin D.  http://ods.od.nih.gov Accessed 09/20/2009.

2009/09/14

東京薬科大学講演会のお知らせ

9月18日に,東京薬科大学で,「アメリカPharm.D.課程における臨床教育の工夫」と題して講演会を行います.学外の方も参加可能です.事前申し込みの必要はありませんので,是非ご参加ください.

http://ssgp.toyaku.ac.jp/experience/event/2009/09/090918_pharm_d.shtml

日時平成21年9月18日(金) 16:30~18:00
場所

教育1号館G階1003(旧G13)講義室

 岩澤 真紀子

2009/09/07

愛知県薬剤師会生涯教育研修会のお知らせ

9月13日に,名古屋市の金城学院大学にて講演を行います.是非ご参加ください.

日時 平成21年9月13日(日)11:30~12:30

場所 金城学院大学 E1号館315講義室

演題 「現場で活かせるアメリカにおける薬局研修の工夫」

演者 岩澤 真紀子

2009/08/24

徳島大学臨床薬剤師交流ネットワーク研修会のお知らせ

9月3日に徳島大学にて講演会を行います.ぜひご参加ください.

日程 9月3日(木)18:30~20:00

場所 薬学部2階 第1講義室

演題 「日本の現場で活かせるアメリカの臨床教育」

参加費 無料

日本薬剤師研修単位 1単位

演者 岩澤 真紀子

2009/08/17

第四十回コラム「薬剤師による抗生剤の注射から経口への剤形変更プログラム」

                田 一美, Pharm.D., BCPS

抗生剤の中には、リネゾリドやキノロン系抗生剤のように、注射と経口の両剤形があり、経口剤のバイオアベイラビリティーが高い(≧90%)ものがいくつかある。特に入院を必要とする重症度の高い感染症の場合、注射剤の抗生物質が最初に投与されることが多い。しかし、使用した注射剤と同じ抗生剤の経口剤があり、そのバイオアベイラビリティーが高い場合、患者の状態が安定した後も注射剤による治療は必要なのだろうか。

いくつかの研究論文によれば、患者の状態が安定した後、注射剤から経口剤に変更することは、患者の臨床効果に影響することなく、さらには在院日数、医療費、そしてライン感染(血管内留置カテーテル関連血流感染)の減少につながることが分かっている。このため、抗生剤治療の際に、患者の状態が許す限り注射剤から経口剤に変更することは、抗生剤適正使用推進をはかる手法の一つとしてIDSA(Infectious Disease Society of America)のAntimicrobial Stewardshipガイドラインの中でも推奨されている。

しかし、医師の中には、注射剤の方が効果が高いという先入観や、バイオアベイラビリティーが高い経口剤がわからない、経口剤に変更するなど細かい治療まで考慮する時間がないなどの理由から、注射剤から経口剤への変更がなかなか行われないのが現実だ。そこで、アメリカの多くの病院では、Pharmacist-initiated IV to PO conversion programというプログラムを実施している施設が多い。これは、規定された抗生剤(通常経口剤のバイオアベイラビリティーが高い抗生剤)の注射剤が投与されている患者さんの内、規定された条件を満たす場合、薬剤師が注射剤から経口剤に処方を変更できるというものである。

私が働いている病院では、キノロン系抗生剤、リネゾリドを始め、九つの抗生剤がこの変更プログラムの対象となっている。規定条件は以下の通りである。

l         注射剤による治療開始後48時間経過していること

l         他の経口剤を服用していて、食事(経腸栄養も含む)が問題なくとれていること

l         吐き気・嘔吐・下痢などの症状がないこと

l         腸閉そくがないこと

l         集中治療室の患者ではないこと

l         抗生剤が心内膜炎、髄膜炎の治療に用いられていないこと 

薬剤師は、対象抗生剤が投与されている患者リストを元に、カルテを読み、看護師に患者の経口摂取の状況を聞きながら、規定条件を満たしているかを評価し、変更を行っている。今回は抗生剤を例に取ったが、経口剤のバイオアベイラビリティーの高い薬剤であれば他の薬剤も変更プログラムの対象にすることが可能である。私が働いている病院では、抗生剤の他にプロトンポンプ阻害薬、ヒスタミンH2受容体拮抗薬、抗てんかん薬のレベチラセタム(日本では承認申請中とか)もこの変更プログラムの対象となっている。

2009/08/09

生涯教育コラム掲載のお知らせ

Pharm.D.クラブの生涯教育サイトに今月のコラムを掲載しましたのでご覧下さい。今回は図書紹介。授乳における薬物治療の専門書を紹介しています。

http://ce.cocolog-nifty.com/blog/

2009/07/17

第三十九回コラム「Board Meeting -Disciplinary Casesを傍聴して」

大内 浩子

アメリカの各州における法律は,大まかに刑法criminal law,民事法civil law),行政法 (administrative law)に区分されます.薬剤師法は、州が規定する行政法の中に位置します.行政の立ち入り検査などによって薬剤師の州行政法への違反が発覚した場合,同じく行政法にて定義される州薬剤師会Board of Pharmacyにより定期的に開催される懲罰審議会Board Meeting -disciplinary casesにて,罰則の審議・確定がなされます.

この懲罰審議会は公開審議で,基本的に誰でも傍聴が可能です.フロリダ州薬剤師会Florida Board of Pharmacyのホームページにも,日程,審議内容が載っていますhttp://www.doh.state.fl.us/mqa/pharmacy/ph_meeting.htmlまた,審議の傍聴は薬剤師免許の更新に必須である生涯教育にも認定されているので,その単位取得も可能です.

罰則は主に,訓告letter of guidance,罰金(fine),指定されたコースの受講,執行猶予probation;この期間中に再び違反行為を行うと,免許停止/剥奪が発生する),薬剤師免許停止suspension,薬剤師免許剥奪revocationがあり,薬剤師の犯した罪の種類,大きさなどにより異なります.

私も6月にこの審議会を傍聴してきましたので,今回はこのお話をしたいと思います.

各審議の流れです.まず各冒頭にて,処罰の対象となる薬剤師(被告)の名前,勤務する施設名,所在地,違反行為の内容が読み上げられます.その後,被告は宣誓の後,会場に設置された椅子に座り,自身の犯した違反行為に対する弁明を行うことが出来ます.

その弁明も加味した上で薬剤師会メンバーが意見を交換し合い,最終的な処罰が決定します.

今回取り上げられた違反行為の例を挙げますと,薬局を閉鎖する際の手続きの不備(ケースA)Prednisone(プレドニゾン)とPrandinRepaglinide;レパグリニド:食後血糖降下剤)の調剤ミス(ケースB),このほか,Prevacid(ランソプラゾール)カプセルとOD錠の調剤ミス,規制薬物(controlled substance:麻薬および向精神薬)の不正使用,生涯教育の必要単位数を規定の期間内に取らなかった薬剤師のケースがありました.例えば,ケースAでは薬剤師免許剥奪+2000の罰金,ケースBでは1000の罰金+年の執行猶予+8時間の調剤ミス防止コース受講が宣告されました.

メンバーによる議論が特に白熱したのは,規制薬物に関連した審議でした.一般的な町の調剤薬局でも,痛み止めの目的で多くの麻薬処方箋を目にするフロリダでは,この案件はとても考えさせられます.今回の審議では,アルコールやアセトアミノフェン,ハイドロコドンに常習癖のある薬剤師の免許を剥奪するかの審議(ケースC),麻薬および向精神薬を含む医療用医薬品を処方箋なしに不必要な量を自ら服用していた薬剤師の審議が行われました.例えばケースCでは,免許停止+審議会の指定した教育コースへの参加+麻薬および向精神薬への接触禁止が宣告されました.しかし将来,審議会への復職申請が許可されれば,罰則の免許停止を5年の執行猶予へ移行する,という事で決着がついたようです.全審議は,途中の休憩も含めて午前8時から始まり,午後240分に終了しました.

“今回当事者となった薬剤師も,かつて学生の時に,自分が将来こうなってしまう事など予想しなかっただろう.どうか他人事と思わずに心して聞いて,今後この様な悲しい事が起こらないよう,ここから学びとって欲しい.将来の自分への戒めとしてほしい.”学生に向けて述べたメンバーの言葉が心に残っています.

この様な公開審議は,薬剤師法を教科書を通してだけでなく,実際のケースを目の当たりにして学ぶ貴重な機会であると思いました.近い将来,薬剤師として働くであろう薬学生に対する貴重な教育の場であるのと同時に,実際に働く薬剤師にとっても襟を正されるものであるに違いありません.

用語:

Florida Board of Pharmacy: 9人からなる.規定として,メンバーの7人は薬剤師の資格を有する事,フロリダ州の住民である事,最低4年間は薬剤師として働いている事,メンバーの1人は薬局勤務である事,メンバーの1人は病院勤務である事,メンバーの2人は薬剤師の資格を有さない事,メンバーの最低1人は60歳以上である事,などがある.

2009/07/11

南山堂「薬局」連載最終回のお知らせ

南山堂「薬局」誌に連載中の「続・Pharm.D.留学ファイル」も、今月で最終回を迎えました。1年以上におよぶ連載をご愛読いただいた読者の皆様に感謝いたします。

今後とも、日本のニーズにあった情報提供・企画をしていきたいと思います。以下のリンクより読者アンケートに是非ご協力をいただきたく、よろしくお願い申し上げます。

http://www.efeedback.jp/eFeedback/startSurveyInitAction.do?key=lH7800aC3rSCVeyN7jSmyw%3D%3D

岩澤 真紀子

2009/06/23

第三十八回「栄養サポートクラークシップから」

東 尚世

私は現在、フロリダ州南東部にありますNova Southeastern Univerisityの最終学年に属しています。今年の1月から、1実習4週間のクラークシップ(臨床実習)が始まりました。今回は今までの実習で一番勉強になった、北マイアミ市Jackson North Medical CenterでのNutrition Support(栄養サポート)クラークシップをご紹介したいと思います。

栄養サポートクラークシップでは、静脈栄養・経腸栄養などの専門的な栄養サポートを必要とする患者のケア学びました。患者の栄養管理は、代謝栄養学の専門家である医師、管理栄養士、看護師、薬剤師が栄養サポートチームとして連携し、個々の患者の病状、栄養状態に応じた栄養管理、ケアに携わっています。このような栄養サポートが発展した背景には、中心静脈栄養によるカテーテル敗血症などの致死的合併症の予防、経腸栄養に比べ膨大な医療費が必要とされる中心静脈栄養の乱用を防止する必要性が生じたことなどが挙げられます。

Jackson North Medical Centerにおける栄養専門薬剤師の主な業務は、医師より静脈栄養の開始指示(開始、中止は医師の指示による)がでた患者の静脈栄養処方設計、静脈栄養の適正評価(適応症の確認、静脈栄養のルート(中心静脈栄養または末梢静脈栄養)の確認)、アセスメント、処方変更です。個々の患者の病気や栄養状況に応じて、適切な栄養管理、処方変更を行い、必要に応じて電解質、インスリン、ビタミン剤などの追加を行います。以下、簡単に手順を紹介したいと思います。

     適応症、静脈栄養の投与経路の確認、病状・栄養状態の評価

u       静脈栄養の適正、栄養状態・病状を評価する。

u       中心静脈栄養は、容量オスモル濃度の制限なく高カロリーを投与できるが、感染リスクが高い。

u       末梢静脈栄養は、血栓静脈炎のリスクを避けるため、900mOsm/L以下の容量オスモル濃度の制限が望ましく、その結果中心静脈栄養に比べて低カロリーになるため、栄養状態の悪い患者にはふさわしくない。

     一日に必要なカロリー、水分量の計算

u       腎不全・心不全・腹水症などの水分制限を要する疾患を除き、一般に水分量は25-30ml/kgとされている。

u       総カロリーは一般には25-30kcal/kgとされている。一日目は50-60%の総カロリー、二日目は75%、三日目には100%をゴールとし患者の状況に合わせながら、栄養管理する。

u       タンパク質カロリーの計算は、肝臓、腎臓の機能や代謝機能の状況を考慮する。

u       脂質カロリーは、一般には総カロリーの20-30%を超えないことが望ましいとされおり、トリグリセリド値が高い場合は、中止または減量する。

u       糖質カロリーは、総カロリーからタンパク質カロリーと脂質カロリーを差し引いたカロリーとなる。ただし、高血糖にならないよう投与速度制限(4-5mg/kg/min)に注意し、糖尿病患者や血糖値が高い患者はさらに慎重にモニタリングする。

     電解質の補正

u       当日朝の電解質値をもとに補正を行うが、補充が目的ではない。

u       電解質を補正する際は、すでに臨時に電解質が投与されていないか、投与薬の中に電解質に影響を与えるものがないか等を考慮にいれる。

     その他、インスリン、ビタミン、微量元素(栄養素)の追加

u       血糖値コントール不良の場合、インスリンを追加する。

u       大半の患者に総合ビタミンを追加し、そのうえにビタミンCや亜鉛を創傷の補修を促す目的に追加、下痢のひどい患者に亜鉛やマグネシウムを追加することがある。

u       胆汁鬱血を伴っている患者を除き、微量元素(亜鉛、銅、マンガン、セレニウム、クロニウム)を追加する。

     静脈栄養のモニター

u       水分やカロリーの許容力のモニター

u       電解質、肝機能、腎機能のモニター

u       感染症などの合併症のモニター

静脈栄養の処方設計・アセスメントには、総合的な知識と経験が必要です。現在、アメリカにはNutrition Support Pharmacist(栄養専門薬剤師)がおり、Board of Pharmaceutical Specialties (BPS)により定められた認定資格と認定試験に合格すれば、Board Certified Nutrition Support Pharmacist (BCNSP)という栄養専門薬剤師資格が与えられます。この資格がなければ薬剤師として栄養の仕事に携われないということではありませんが、米国のBoard Certified Nutrition Support Pharmacist (BCNSP)のように栄養の専門知識を身につけ、トレーニングを受けることにより、日本でも臨床薬剤師が患者の栄養管理に介入できる分野が広がることを願います。

<参考>

Board Certified Nutrition Support Pharmacist (BCNSP)有資格の必要条件;

·         米国Accreditation Council for Pharmacy Education (ACPE)が認定する薬学大学を卒業している者。または、それと同等の資格が認められた者。

·         現在、米国で、実際に臨床現場で従事している者。 

·         レジデンシー2年目でNutrition Supportを終了した者、または3年間の臨床経験があり、その大半をNutrition Support業務に従事した者。

認定試験の内容;

·         個々の患者に応じた評価、治療プラン、モニタリングに関する臨床実践問題。

·         個々の患者に応じたケア、栄養管理に関する問題。 

·         特別なケアを要する患者に関する問題。

認定資格の更新;

·         2年間にnutrition support関連の生涯教育を最低3単位修得すること。

·         認定再更新の総合試験に合格すること。

2009/05/31

第三十七回コラム 「Home Medicines Review について」

                     吉原 成明

今回はオーストラリアから、薬剤師の在宅医療にあたるHome Medicines Review についてご紹介いたします。薬剤師の在宅医療というと、日本における在宅訪問服薬指導のような業務を想像する方も多いと思いますが、オーストラリアのHome Medicines Review (以後HMR)はこの在宅訪問服薬指導よりもさらに具体的で、もう少し踏み込んだ活動を行っています。

HMRの目的は、患者さんの自宅を訪問し、生活習慣や全ての薬剤を見直すことにより、患者さん個々に合わせた最適な薬剤マネージメントをはかる事にあります。必要に応じて、薬剤や投与計画の変更を処方医(GP)に提案し、薬剤の有効性の最大化と副作用リスクの軽減をはかることも目的の一つです。

少しイメージが掴みにくいと思うので、ここで具体的な業務の流れをご紹介したいと思います。

Step 1:まずは HMRの必要性のある患者さんを、医師や薬剤師、もしくは他の医療関係者が特定します。例えば、多剤を併用していてアドヒアランスの心配がある場合、TDMの必要性のある薬剤を服用している場合、特定の問題を抱えている場合(認知症や身体的な障害等)、何かの副作用が疑われる場合、転倒等のリスクが高い場合などがあげられます。

Step 2:そしてその問題に対し、患者さんのGP(ホームドクター)が必要性を認め、かつ保険で定める適応基準を満たしている場合に、患者さんに同意をとった上でGPがその患者さんのかかりつけ薬局に対しHMRの紹介状を書きます。

Step 3:医師からHMRの依頼を受けた薬局は大抵の場合、HMRを行う資格を持った外部の認定薬剤師にHMRを依頼します。この認定薬剤師になるには、特定のPostgraduate (大学院)にあたるコースを修了しその後認定試験に合格する必要があり、この認定資格を持った薬剤師はまだあまり多くはありません。

Step 4:認定薬剤師は医師やかかりつけ薬局から、必要な病歴や薬歴、臨床検査結果などを事前に入手し、アポイントをとってから患者さんの自宅を訪問します。

Step 5: 通常の場合、患者さんが現在飲んでいる全ての薬やサプリメントを事前にテーブルの上に用意してもらい、30分~1時間かけて各薬剤に対しての服用状況や生活習慣について詳しく話し合います。 また、このときに患者さんの各薬剤に対しての理解度をチェックし、必要であれば詳しく服薬指導します。特に、糖尿病や喘息の患者で器具を使っている場合は、患者さんにデモンストレーションをしてもらい、本当にうまく使えているかなどのアセスメントも行います。

Step 6: 患者さんのインタビューをもとに薬剤の副作用や相互作用等の問題点を洗い出し、患者さんの現在の状況や、必要な薬剤の変更点を医師に提案します。基本的にはA4用紙2枚程度に、患者さんが現在飲んでいる薬の用量・用法一覧と薬剤に関する問題点、必要であれば薬剤の変更や臨床検査の提案をまとめ、手紙として医師に送付します。

Step 7: その後その手紙をもとに医師が再び患者さんを診察し、必要ならば薬剤の変更を行います。

Step 8: 最後に医療費の請求ですが、このHMRに関しては基本的に患者さんの自己負担は一切なく、全てオーストラリアの国民健康保険にあたるMedicareから支払われます。

ちなみこの報酬ですが、2009年度ではHMR一件につき薬剤師に対しての報酬が$187.092009528日現在のレートで約14000円)、ドクターに対しては$134.10(約10000円)で、毎年この報酬金額は増加傾向にあります。というのもここオーストラリアでは毎年薬剤の副作用やアドヒアランスに関係した問題で140,000人が入院し、このうち約900人が亡くなっています。しかしこのうち約半数は薬の管理をしっかりと行っていれば防ぐ事のできた問題でした。 これを重くみたオーストラリア政府は、2005年からこのHome Medicines Reviewを導入し、薬剤の有効性と安全性の確立に努めています。また、オーストラリアの医療制度はすべて対費用効果に基づいて決められており、恐らく政府の試算ではこういった報酬を出しても、薬に関係した有害事象を減らす事ができれば最終的には安くつくという結果になったのだと思います。

このHMRですが、私も研修で何人かの患者さんの自宅を訪れましたが、行くたびに毎回何かしらの問題に出くわします。実際に多かったのはやはりアドヒアランスの問題です。薬の用法や用量に関し患者さんが自分で判断し、医師が処方した用法用量と違う場合や、ある薬を完全に飲み忘れている事が多々ありました。その他にも、混合ビタミン剤やサプリメント等を含めた薬物相互作用、薬剤による立ちくらみやめまいからくる転倒リスク、有効期限切れ薬剤(狭心症等の舌下錠)など、実際に患者さんの自宅を訪問してゆっくりと時間をとって話さなければ解らないような問題も多くありました。

実際にこのHMRを行う認定薬剤師についてですが、基本的には薬剤の特徴を熟知した病院出身の薬剤師が多いようですが、育児を抱えた薬剤師や、定年した薬剤師など、どこの企業や薬局にも属さず、フリーで自分の時間の空いたときに行っている方が多いようです。こういった何処にも属さないフリーの薬剤のプロフェッショナルという概念は世界中を見ても非常に珍しいと思います。昨今の日本では医療費抑制のため、入院患者を在宅療養へと移す流れが今後徐々に加速していくと予想されており、薬剤師の在宅訪問服薬指導の重要性もますます高まってくると言われています。そういった事を考えると、こういった在宅医療専門薬剤師が今後日本の薬剤師のありかたの一つのモデルになる日もそう遠くはないかも知れません。

2009/05/22

生涯教育コラム掲載のお知らせ

Pharm.D.クラブ主催の生涯教育サイトに,生涯教育コラムをアップしました。今回は大腸がん治療に関するコラムです。是非ご覧ください。

http://ce.cocolog-nifty.com/

2009/04/30

第三十六回コラム 「レジデンシープログラムの面接」

                           大友 千絵子, Pharm.D.

2008年12月に2年半のPharm.D.プログラム(accelerated program)を終え、Board exam(国家試験)も無事にパスし、2009年7月からカリフォルニア州にてPGY1、一年目のPharmacy Residencyをすることになりました。今回は記憶がまだ新しいうちにレジデンシープログラムの面接について触れたいと思います。

私は9つのレジデンシープログラムに出願し,そのうち5つのプログラムからインタビュー(面接)の招待を受けることができました。レジデンシープログラムに進みたいか否かを探りつつ、クラークシップ先のどの指導薬剤師に推薦状をお願いするかを模索しながらの日々を過ごしていたのが昨年の今頃です。10月から11月にかけて推薦状を推薦者に依頼し、12月にすべての申し込み書類を書き上げました。5つのプログラムはすべてカリフォルニアでしたが、どこも少しづつ面接内容は異なります。しかしGeneral Interviewと呼ばれるいわゆる一般面接ではほぼ同じようなことを聞かれ、数をこなすにつれ面接そのものに慣れていったような気がします。

たいていのプログラムはCV(Curriculum Vitae)からの内容を参考に質問してきます。Curriculum Vitaeとは履歴書の詳細版で、大体4~7ページくらいの長さになります。私はこのCVの作成に力を入れ、指導薬剤師、研修先のレジデンシーディレクターなど経験豊富で、実際にインタビューする側の人たちに見てもらい、指導を頂きました。以下が実際に質問された内容です。

1.日本でも薬剤師とのことですが、アメリカと日本の違いはどんなところがあげられますか?

2.一番好きだったクラークシップ、一番嫌いだったクラークシップとその理由をあげてください

3.どのようにストレスに耐えますか?事例を挙げて、どんな風に対処したか教えてください。

4.他の学生よりもあなたを選ぶべき理由はなんですか?

5.レジデンシーをしたい理由は何ですか?このプログラムに志願した理由は何ですか?

一度のインタビュー時間は約60分です。その60分の間に面接官は私の受け答えの態度や、ジェスチャー、表情全てを見ているといっても過言ではありません。しかし面接そのものはどれも和やかな雰囲気で過ぎていきました。問題はClinical Interviewです。今まで何度も面接を受けてきてある程度の経験はあるものの、このClinical interviewに関しては全くといっていいほど無知でした。幸い現在働いている病院のレジデントたちが私に模擬面接をしてくれて実際の雰囲気を掴むことができました。

どのレジデンシープログラムでも聞かれたトピックは抗凝血薬療法(Anticoagulation)です。ヘパリン・ワーファリンの用量や薬の作用機序、腎機能低下時の用量調節、HIT(Heparin-Induced Thrombocytopenia)の種類とHIT患者に対する代替薬品、ワーファリンとヘパリンのブリッジ療法、低分子ヘパリン(LMWH:Low-Molecular-Weight Heparin)を肥満患者に投与した場合にどの臨床検査値をチェックするかなどを質問されました。会話をしながら聞かれる場合と、一枚の紙にケースとして患者情報や臨床検査値が書かれていて、それを見ながら実際に薬剤師としてその患者をケアしていくにはどうするのかという具合に進めていく場合とがありました。それ以外のトピックでは、高血圧、脂質異常症、糖尿病、CHF(うっ血性心不全)、感染症全般などからの質問が多かったです。

私が実際に採用されたレジデンシー先では、Journal clubのプレゼンテーションを30分行いました。インタビューの1週間前に指定の論文がメールで送られ、それについてプレゼンを30分するようにとのことでした。それからは毎日それにかかりきり、実際に筆頭論文者にメールで質問したり、statisticsの解析方法が妥当かなどを検討したり、考えられるあらゆる質問を想定して準備を進めました。そのほかのプログラムでは、5分のプレゼンテーション(内容は自由)、15分のプレゼンテーション(ヘルスケアを改革するにあたり、オバマ大統領にどんな提案をするか)などの課題が与えられました。

質問そのものが分からなかったり、質問の答えが分からなかったりした時の答え方はとても重要です。『それに対し、どんな風に受け答えをするかで印象は随分変わるよ。』そう教えてくれたのは一人だけではありません。分からないのにいい加減な答えや中途半端な答えを返すよりも、あとできちんと調べて回答するという姿勢が大切です。私はその場で分からなかった質問に関してはメールやThank you letterの中で、回答するように心がけました。そしてその場で分からなかったときも、ただ『I don't know』というよりも、『I know this and this etc. But I will double check with the resources such as....(i.e. micromedex, Lexi-comp, guideline, etc etc..)というように、どんな風にして調べるかを加えるとより良いようです。

周囲の助けをたくさん借り、第一希望のレジデンシー先にマッチングすることができました。レジデンシーの様子は私個人のブログ(http://chipharmd.exblog.jp)でもお伝えしていきたいと思います。

2009/03/25

第三十五回コラム 「アメリカにおけるPseudoephedrine (偽エフェドリン)の規制:The Combat Methamphetamine Epidemic Act of 2005」

松本 千鶴, Pharm.D.

Pseudoephedrine は、アメリカでOTC薬として売られている鼻炎薬の多くに含まれる主要成分です。代表とされるのがSudafed®、そして他には抗ヒスタミン剤とのコンビネーション薬、Claritin D®などがあげられます。Pseudoephedrineはα1血管収縮作用により、鼻粘膜の充血やはれをおさえ、鼻づまりを改善します。鼻炎や風邪、花粉症などのアレルギーにより引き起こされる鼻づまりに対してとても有効な薬です。

しかし、Pseudoephedrineには大きな問題があります。Pseudoephedrineは、依存性の非常に高い覚せい剤である、Methamphetamine (メタンフェタミン)の原料となるのです。Methamphetamineは、人々の間では”meth”と呼ばれ、アメリカではコカイン、マリファナ、ヘロインをはるかに上回る問題となっています。アメリカ国内では、Pseudoephedrineを薬局から盗み、買いあさり、違法なMethamphetamineを合成するといった犯罪が多発しました。Methamphetamineの合成は、比較的簡単な設備だけで可能で、アメリカ全土で”Small toxic lab”と呼ばれる違法な実験室が、家、ホテルの部屋、ガレージ、さらには車の中などからたくさん発見されました。爆発の危険や、毒性のある廃棄物の処理などの問題をもったこれらの実験室は、アメリカで大きな問題となりました。また、薬物中毒者による強盗や犯罪も多発する結果となりました。

このように人々の安全を脅かす危険な覚せい剤であるMethamphetamineを、処方箋を必要としない市販薬として誰もが購入できる薬の成分から合成するという違法な行為を防ぐため、アメリカのDEA(The Drug Enforcement Administration 麻薬取締局)によって、Pseudoephedrineを含む医薬品の購入と販売に規制がかかりました。それがThe Combat Methamphetamine Epidemic Act of 2005CMEA)です。この制度はアメリカの全ての州で、20069月から導入されました。主な内容は以下の通りです。

l  全てのPseudoephedrineを含む医薬品は、薬局のカウンター内(behind the counter)、もしくは鍵のかかった棚に陳列すること

l  1日に購入できるPseudoephedrineの量は一人3.6グラムまで

l  30日間で一人9グラムまで

l  18歳以下への販売の禁止

l  購入の際は、写真付の身分証名を提示すること

l  販売の際は、業務日誌に、購入者の名前、住所、署名、購入日と時間、医薬品名とPseudoephedrineの量、そして薬剤師の署名を記入すること

l  業務日誌は最低2年間保存すること

アメリカでは、国の法律に加え、それぞれの州で独自の法律を制定するので、細かい制度は州によって多少異なります。たとえば、オレゴン州の法律では、Pseudoephedrineを含む医薬品を医師の処方箋なしで手に入れることができません。わたしが住むカリフォルニア州では、処方箋は必要ありませんが、Pseudoephedrineを含む医薬品は全て薬局のカウンターの中に陳列し、薬局のカウンターでしか販売することができません。販売は、薬剤師、または薬剤師の管理下において、インターンとテクニシャンによってのみ行うことができます。また、アメリカ以外の身分証明書、たとえばカナダやメキシコの免許などでは購入することができません。薬局で働く薬剤師とテクニシャンには、Pseudoephedrineの販売に関するトレーニングが毎年1回義務付けられています。

薬局は、購入者の情報を業務日誌に記入することで、やたらと頻繁にPseudoephedrineを購入していく疑わしい人を特定することが可能です。もしも違法に販売してしまえば、それはその薬局の薬剤師の責任となります。調剤薬局の薬剤師はこの新しい制度によって、違法な薬物の合成・乱用を防ぎ、人々の安全を守る重要な役割をまかされたと言えると思います。

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